OTHER-D-

□甘くなる
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「……」



スマホのメッセージを確認して、眉をひそめる。

送ってきた相手は
中学の頃から相も変わらず『自由』だ。

こちらまで気が緩んでしまいそうなくらいの
底抜けに人の良さそうな笑顔で
馴れ馴れしく、でも とても嬉しそうに



「なまえ」



私の名前を呼ぶせいで
昔から、彼の願い事を断れた試しがない。



「ごめんね、急に。お詫びの印」

「…いいわよ、別に。今に始まったことじゃないもの」

「ふふ」

「何がおかしいのかしら」

「いやあ、なまえ相手だとつい わがまま言っちゃうんだよね」

「…自覚がある分たちが悪いのよね」



お詫びなんていいながら 誰にでも差し出すその花を受け取るのも
それをこうして髪飾りにするのも、もう何度目かなんて覚えていない。



「あれ、今日は僕の花を飾ってくれるの?」

「今日はまだファンに貰っていないから」

「…いいよね、そのファンサービス。花を挿してくれている間のなまえは 僕のモノだって気がして嬉しくなるよ」

「ファンに喜ばれているのは知っているけど…そんなこと考えているのは あなただけだと思うわ」

「え?そんなことないよ」

「どうだか」

「誰のものでもない、手の届くはずもない君が、自分の差し出したものを身に纏ってバトルをしてくれる…それに優越感を感じない人っているのかな?僕は存在しないと思うよ」

「…あなたいつもそんなこと思ってたの?」

「はは、バレちゃった」

「……」



隠す気なんて、ないくせに。
そう思いつつ じとっとした視線を向ければ、また人の良さそうな笑顔で微笑む。

いつも、そうやって
もう出会って 何年も経つのに


様々な言葉で 好意を添えてくる。




それが少しだけ怖いと言ったら

あなたはどんな顔をするかしら。





「あ、そうだ。バトルが終わったら今日のお詫びに美味しい食事でもどう?」

「珍しいわね。弟はいいの?」

「う〜ん…最近は少し早めに帰ってきてくれるようになったんだけど、一緒に食べようとすると逃げられちゃうんだよね。タクマにはちゃんと食べてもらいたいんだけど…」

「あなたが食事中もずっと話しかけるからでしょう」

「はは、お見通しだね」

「お見通しも何も大抵そうじゃない」



私のその言葉に、「タクマとなまえにだけだよ」と少し静かに答えられると私は何も返せなくなる。



その括りから、どうやったら抜け出せるのか



いくら考えても答えがでない。



「やっぱり一人の食事は寂しいからさ。行こうよなまえ」

「…断っても無駄なんでしょう」

「うん、僕が君と食事に行きたいからね」



いつまで あなたはそうして



「あなたってどうしていつもそうなのかしら…もう少し理性的な理由を用意できないの?」

「難しいかな。本心でしかないからね」

「はぁ……このバトルであなたが勝てたらね」



いつまで 私はこうして



「なまえも大体『それ』だよね。僕としては両方叶って嬉しいけど」

「これ以外じゃあなたが引かないからでしょう?しかも当然勝つ気でいる事に腹が立つわね。削り倒すわ」

「引かないよ。こういう時の僕が強いのはなまえならよく知ってると思うけど?」

「勝てないわけじゃないことを知ってるわ」

「はは、強気だなあ」





いつまで
この関係で、二人 同じ場所に立っていられるのか。





なんて、私がそれを憂うのはおかしいのよね。


手を伸ばす資格を棄ててしまったことに後悔はしていない。
それでも、



あなたの願いにはどうしても










なる



これが、後悔でも贖罪でも恋心でもないとしたなら一体何になるのかしら。










OTHER





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