OTHER-D-

□待ち遠しくなる
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「懐かしいなー」



そんなことを口にしながら 昔通っていた中学の裏門へと足を運ぶ。
なんとなく正門では会えない気がして こっちに来てみたんだけど…
タクマを変えたっていう夜月ルシアくん、会えるといいな。


そうは思うものの、頭では既に別の情景が浮かんでいて

なまえと出会った場所だからかな。
何だか、他より思い入れが強い気がして思いを馳せる。



最初はクラスも違っていたからお互いの事は全く知らなくて
お昼休みにバトルをしている姿を見かけて、興味を持った。

お昼に誰かがバトルをしている場面なんて珍しくもないけど
スペルウィッチを高いレベルで使いこなしている同年代は珍しくて、バトル後思わず声をかけた。



『おめでとう。いやー、君 強いね!ウィッチをここまで使いこなせるなんてすごいなぁ』

『……どうも』



お祝いと挨拶も兼ねてマジックで薔薇を差し出すと
誰とか、何とか 聞くこともなく彼女はそれを受け取り
そっと手を添え、香りを楽しむような仕草をした。

遠めから見た印象だと、もう少し好戦的な態度をとられるかな?と思っていたから少し意外だ。



『…受け取ってもらえて良かったよ』

『花に罪はないもの。あなたは限りなく怪しいけどね。何か用?』

『えぇ?怪しいかな…ただ君とバトルをしてみたいなと思ったんだ』

『バトルなら喜んで』

『放課後にしようか?』

『10分もあれば十分でしょう』



そう言って、手にしていた花を耳元へ飾り付ける。
バトルをするのに邪魔だったんだろうけど、
綺麗な髪を彩るそれに 僕はなんだか少し嬉しくなって、微笑んだ。



『よく似合ってるよ』

『…いいから準備しなさいよ』

『ふふ、照れなくてもいいのに』

『照れてないわよ…変なことばかり言わないでくれる?』

『はは…じゃあ、始めようか』



さっきのバトルも7ターン目に決着がついていたことを考えると
普段のバトルなら10分で十分な時間なんだろう。


けど、今回は時間切れの方が早かった。



『10分で終わらないなんて見誤ったわ。あなた、名前は?』

『僕は 牙倉セイヤ。君は?』

『みょうじ なまえよ。牙倉セイヤ、次は削り倒すから』



そんな彼女の強気な台詞から
僕たちは毎日と言っていい程にバトルをするようになって…


プロプレイヤーになった今でもライバルなんだから
人生って不思議だなぁ… と思うと同時に、なまえとのバトルが恋しくなる。



…うん、この用が済んだら会いに行こうかな。



昨日聞いた時の話しぶりだと今日は何もないみたいだったし。
『どうして急にそうなるのよ!』って返ってくるだろうメッセージには
なまえとバトルがしたくなったんだ、と送ればきっと付き合ってくれるだろう。
彼女はどうしてか、僕の頼みに甘いから。


会えばきっと 少し不機嫌な顔をするだろうなまえを想像して









遠しくなる



自分勝手な僕に、君はいつも通り呆れながらも薔薇を受け取ってくれるだろうから。









→02.甘くなる





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