OTHER-D-

□メール
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「あれ、カズヤくん?」




後ろから名前を呼ばれて、俺は振り向くまでもなくそれが誰の声か分かっちまって
声聞いただけで分かるくらい、好きなのかとか
このタイミングで会うなんて俺 運わりーのかなとか
そんなことを思いつつ振り返った。



「なまえ…さん、」

「偶然だね、お買い…物…」



言葉も途中に笑顔のまま沈黙するなまえさん。
絶対勘違いしてる!すげー勘違いしてる!

俺の後ろにはアミが居て、バンと待ち合わせ中で、
なんでこのタイミングなんだ…せめてバンが居れば…!なんて思ってもどうしようもねーから
とりあえず誤解はされたくねーし、さくっと説明しようと口を開く。



「あー、こいつはアミって言っ」
「ごめんっ!!カズヤくん…!」

「え、」


「…デート中、…だよね?」


「ちが」
「ホントにごめんね…!つい、つい!あー…女の子と居るときに声かけちゃうなんて私最低…!カズヤくんで見えなかったの…!」

「ちょ、話聞…」
「それにしても…アミちゃんていうの?可愛い彼女さんだね!」

「違うって!!」



なまえさんは予想を裏切らず盛大に勘違いしてて、
勢いよく謝ったり誉めたり…完全に思い込んでて俺の話なんてまるで聞いてねぇし…
アミはアミでニヤニヤ笑って俺の方見てくるし
完全にこの後ネタにされるじゃねーか…!



「カズヤくん相変わらず照れ屋さんだね。メールで教えてくれたらよかったのに」

「ちっげぇし!!」

「ん?」

「照れてねーし、俺 彼女居ねーよ!コイツは友達!!」

「え、…違うの?」

「今他の奴待ってんだって!なまえさん絶対勘違いすると思った…」

「え、じゃあ…んー、好きな子とか?」

「マジで友達だから!マジでないから!!」



小さな声で耳打ちされた内容を全力で否定すと
なまえさんはキョトンとして、そうなんだ?とか言って。

そうなんだ?じゃねぇし!俺が好きなのはアンタだっての!!!…言えねーけど!!
と一人やきもきする俺の後ろでアミが小さく笑い出すからなんかすげー恥ずかしくなってアミにあたる。



「笑ってねーでなんか言えよ!」

「だってカズが必死なの面白いんだもん」

「…本当いい性格してるぜ」

「ありがと」



誉めてねーけど…と思いながら
自己紹介を始めたアミを横目にため息をついた。
まぁアミなら上手く誤解も解いてくれんだろうし任せて大丈夫だろ。








「…勘違いだったんだね、ごめんね?」

「分かってもらえたんならいいけど…」

「うん、大丈夫!バッチリです!安心して?」

「はぁ、」

「じゃあ、またメールするね〜」



手を振ってあっさりと去っていくなまえさんを見送って

メール、なぁ…なんて思いながらCCMを眺めた。
何回か送ってみようとしたこともあるけど、いつも結局送れずじまいで。
なまえさんからのメールは突拍子でよく分かんねー内容多いし…すぐ返しても次返ってこないとかもあるしで。
返ってこなかったら嫌だしな…とか思ったら余計に何送ればいいか分かんなくて
何かねーかなーとCCMを片手に唸ってる俺を見て、アミが笑った。



「カズって年上が好みだったのね〜」

「…なんだよ」

「別に?可愛い人じゃない、なまえさん」

「……」



口でアミに勝てるわけねーから黙る。
これ以上からかわれる前に、バンが来るのを願うしかない。



「おせーな、バンの奴…」

「そうね…」



連絡でもしてみるか、と手に持ったままのCCMを操作しようとするとメッセージ音が。
タイミング良くアミのCCMからもメッセージ音がして二人顔を見合わせた。



「バンか?」

「…違ったわ」

「…俺も」



誰かと思えばなまえさんで、『今度私とも遊ぼーね?アイス食べたいなあ♪私いちごので、カズヤくんはチョコ!』なんてメールの内容で。
どっか行くの前提だし、唐突にアイスだし、何故か俺の食う味決められてるし。
本当に自分のペース崩さない人だな…
なんて思い切り振り回されてるけど、それでもいいかなとも思ってて



「顔ニヤけてるわよ?カズ」

「う、うっせー…」

「今度バンも入れて4人で遊びましょう、だって。なまえさんが」

「…は?!お、え、いつの間にアドレス…」

「いーじゃない、どうせカズはヘタレで誘えないでしょうから、私とバンで付き合ってあげる」

「ヘ、ヘタレじゃねーし!」

「はいはい」



そう軽く流される。
これ以上ヘタレだ何だとからかわれるのも嫌だから、CCMでバンの呼び出しにかかった。















あとで返事『いつが良いですか』なんて送って、みっかな













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