OTHER-D-

□たまにはふたりで
1ページ/1ページ





「ホウジくん、本当に来ないんだね」



ワキヤとホウジくんの試合が決まった帰りの車で
『ホウジのやつ、試合までウチにはこーへん言うてたわ』なんて聞かされた時は そうなんだ、くらいに思っていたけど

いざ本当に居ないのを見たら
なんだか変な感じがして、 ワキヤにそう声をかけた。



「それだけアイツも本気なんや」

「…ホウジくん来ないと寂しいんじゃない?」

「んなわけあらへんやろ」

「さっき、ホウジくんのおじさまに ホウジくんがどうしてるか聞いていたから」

「それはちゃあんと練習しとるんか聞いただけや!こっちこーへん分 練習不足でつまらん試合になったらかなわんからな!」



口ではそう言ってても、気にしてるのはバレバレで
少しくらい素直になってくれても良いのに、と思う。



「私が様子、見てこようか?」

「アホか!いらんわ。だいたいお前までおらんなったら、…」

「…ら?」



勢いまかせに途中まで出てきた言葉の、その先を聞きたくて
少しいじわるかなって思ったけど聞き返す。
ワキヤのことだから、素直に言ってくれるわけないのは分かってるんだけど



「……誰がワイの練習相手すると思っとるんや!」

「……」

「なんやその顔は」



分かっててもやっぱり、自分のことになると余計に聞きたくて
どうしたら言ってくれるのかな、って 手に持った自分のベイに、聞くみたいにして考える。

いくら少しワキヤに教えてもらったからっていっても
私の実力はホウジくんほどもないから、たまに相手にしてくれるけど 正直練習にはなっていないと思う。
居ないよりはきっと、居た方が良いんだろうけど

でもやっぱり、そうじゃなくて。



「じゃあこのバトル、ワキヤが勝ったらやっぱり私じゃ練習相手にならないだろうから ホウジくんを呼びに行ってみようかな?」

「いらん言うとるやろ。だいたいワイが勝つに決まっとる勝負で、そんなもん決めるのが無意味や」





ワキヤのその言葉の通りにバトルは一瞬で終わってしまって
それはもう、いる意味があったのか分からないくらい。

やっぱりバトルは見てる方が好きだし、
ホウジくん本当に来ないのかお家行ってみようかなぁって呟けば
ワキヤがはーっとため息をついた。



「アイツの決めたことやねんから邪魔すな」

「…そうだけど、」



私が『将来の結婚相手に』なんて言われて、ワキヤと出会ったときには 既にホウジくんが一緒に居て
二人がトレーニングしたり、バトルしたりしてるのをそばで見てるのが楽しくて、それが当たり前だったから

二人だと、なんだか上手くいかない気がして俯いた。





「…ええから!お前は大人しくここにおったらええんや!」





「、」

「ワイがおったらそれでええやろ!」

「…うん、」

「それをお前は、ホウジホウジて…」



どうしてか突然、拗ねたみたいにそう言うワキヤに
少しいつも通りの空気を感じて思わず小さく笑う。



「何笑てんねん!」

「最初から、そう言ってくれたらいいのにって思って」

「何でワイがいちいち…」

「嬉しいのに」

「うっさい!もう言わんわ!」

「じゃあ…一生覚えてるね」

「あーー!!ほんっまにお前は!…もう ええ、好きにせえ!」

「うん。ね、もう一回バトルする?」

「当たり前やろ。お前しかおらへんねんから」



その言葉がまた少し



嬉しくて








にはふたりで



過ごすのもいいなぁって思った。







OTHER




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ