OTHER-D-

□ずっと
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出会った時からきっとそうだった
なんとなく分かっていて






気づかないフリをし続けていた。






「ガイ、」

「なまえか」



少し、遠くから声がかかって。
ゆっくりと近づいてくる、距離を計るように。
彼女と俺の距離感はいつでも心地よく。それでいてもどかしい。



「見張り、代わらなくて平気?」

「俺なら大丈夫さ」



向かい合って座る俺達のいつも通りのはずの距離が
今日の出来事のせいだろうか…
何だかいつもより遠いような気がして



「眠れないのかい?」

「少し話をしたら、寝ようかな」

「俺で良ければ付き合わせてもらうよ」

「ありがとう、ガイ」



今日も優しく微笑む彼女をただ、見ているだけで
幸せにはなれても、まだ何か足りないように感じていて



「…ガイ、よかったね」

「ん?」

「アニスを助けられて」

「あぁ、…」



無性に、この距離を縮めたくて仕方がなくて




一度触れてしまえば…何かが終わるんじゃないか、始まるんじゃないかと変わるものを恐れて
お互いに距離をとり続けてきた



「そうだ、…君に頼みたいことがあるんだが」

「うん?私にできることなら。…なに?」

「…手を握らせてもらっても、いいかい?」



出会った時からそう、なんとなく分かっていたのを
体質のせいにして気づかないフリをし続けてきた。




俺が彼女を愛しく感じていて、
きっと彼女も似た感情を抱いてくれていて。

不思議と断られる気はしなかった。





「……戻れないかもしれないよ?」





なんとなく分かっていて


お互いに、

気づかないフリをし続けてきた





「…あぁ、」

「他にもそのお願い聞いてくれる人、居るよ?」

「それでも俺は、1番に君に頼むよ」







それを今日で、終わりにしないか?







「……好きになってもいいの?」

「勿論」




どちらもが手を伸ばさなければ届かない距離が一歩縮まって、俺の手は相変わらず震えていたけど
構わず彼女の手をとって、手の甲へ唇を寄せた。



「、」

「今はこれでも、かなり…精一杯なんだが…いつか君を、抱きしめさせてもらえないか」

「ガイ…」





「知っていたかもいれないけど、俺はずっと、君が好きだったんだ」





震えが体に広がっていって、
なんとも情けない告白に見えるかもしれない。

それでもやっと進めたことを嬉しく思う。





「俺と付き合って頂けませんか?」



「…私でよければ、喜んで」




出会った時からきっとそうだった

なんとなく分かっていて






お互いに気づかないフリをしていたんだ














お互いに好きだったんだ








OTHER







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