OTHER-D-

□手遅れ
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「アンタ正直、ルカのことどー思ってんのよ?」





なんて、イリアが聞いてきたのが全ての始まり。

今、私たちは宿屋に居て
アンジュが買い出しに行くと、護衛にリカルドさん、荷物持ち係にルカ(大丈夫かな…)、
買い物と聞いてついて行くと言ってきかなくなったエルマーナとコーダを連れて出掛けていった。
残ったメンツといえば、イリアとスパーダと私。

1つの丸いテーブルを3人で囲んで話をしていた。
といっても暇だ暇だと騒いだり、ルカいじりの作戦(?)を練っている2人の話を
私はただ、紅茶を飲みながら聞いていただけ。

のハズだったのに



「おー、そこんとこ俺も気になってたんだわ」

「な、に言ってるの2人共…」

「何って、ねぇ!」
「だよなァ!」



スパーダまで話にのってきて、二人して変な笑い声を出しながら聞いてくる。
え、もしかして今これ私がイジられそうなの?とか思っているとイリアが話を進める。



「だってアンタ、ルカには特別優しいじゃない」

「そんなことないよ?」

「しょっちゅう構ってるしな」

「それは2人がいつもルカに意地悪だからでしょう」

「あーら!全然そんなことありませんわよ〜!」



ねぇ、スパーダさん?といつものわざとらしい掛け合いを目の前で繰り広げられる。
私をいじる事を確実に楽しみ始めている2人を目の前に、ただ ため息を吐いた。
下手な反応をすれば、この流れがヒートアップするのは目に見えているから、できるだけ冷静を装って紅茶を口にした。





「案外ルカに気があるんじゃねーの?」





「何?!そうだったの?!」

「っ!!ゴホッゴホッ」



予想外の発言に、口に含んだ紅茶が変な場所へと流れ込んでむせかえる。
何を言い出すんだと睨むようにスパーダを見れば、先ほどより更に意地悪そうに顔をニヤつかせて私を見た。
本人に自覚がなくてもイリアがルカを気にしていると分かっていてそんなこと言うのだから本当に意地が悪い。



「何よ!だったらもっと早くいいなさいよねー!!」

「だよなァ、水くせぇぜ!」



未だ言葉が出ない私を放って話を進めていく。
至極楽しそうにしているスパーダに、心の中で悪態つきながらとにかく咳を落ち着かせて、息を吐く。

イリアを敵に回すなんてまっぴらごめんだ。
否定しつつも一瞬で納得させられそうな策がないかとあれこれ思考を巡らせる。



「ちょっと2人共落ち着いて?私、そんなつもりないし…」

「あーら、照れなくたっていいんですのよなまえさん?」

「そうだぜ?素直になっとけよ」

「もう、スパーダ!!」

「そうよ?べっつに隠さなくったっていいんだからぁ〜」

「もう…」



反応を返せば返すほど、逃れられなくなっていく。
そう、もう余程の事がない限りこの2人から逃げられはしないのだ。

隣の席では、スパーダが楽しそうに笑っていて、
目の前にはイリアが詰めよってきてる。
飽きる様子なんて微塵もなかった。

スパーダに余計なことを言わせず、なおイリアに納得してもらえそうな何かは…



「で、どうなのよ?」

「…イリア、あのね。…ちょっと言いづらいんだけど…」



あまり解決するような気はしないけど…今の私が思いつくのはこれくらい。
詰め寄りすぎなくらいのイリアを前に覚悟を決めて。

前置きの時点で2人共完全に聞く体勢に入る。







「私、スパーダの方が好みなの」







「「……」」



「はぁああああ?!」



スパーダの叫び声と共にバターン!と音を立てて椅子が倒れた。
よく分からないけど相当驚いた様子だから、さっきの仕返しにはなった気がする。うん、満足。



「おっ、お前!なっ、なに…」

「そんなの早く言いなさいよねー!よかったじゃーん!スパーダさん?」



顔を真っ赤にさせてどもり始めるスパーダに
新しいおもちゃを見つけたようにニヤニヤとしたイリアが、 変な笑い声出しながらスパーダの背中をバシバシと叩いた。
不覚にも照れてるスパーダが可愛いなぁ、なんて思う。



「う、ううう、うるせー!!」

「オホホホホ、照れなくていいのよスパーダさんっ!」

「黙りやがれイリアッ!!」



ぎゃーぎゃーとヒートアップしていく二人。
私はといえば、紅茶を飲みつつ二人を見守るという 話題が始まる前同様の放置っぷり。

もっと追及されるかと思っていたけど…一番良い選択肢だったのかも?と矛先が変わって安心していると、
イリアが上機嫌で邪魔しちゃ悪いわね〜?なんて言いながら部屋を出て行った。





「「……」」





それは流石に…多少なりとも気まずいんだけどイリア…。

じとっと見つめてくるスパーダに視線を合わせる。
顔の赤みも引き始めいていた。



「…なんか ごめんね…?」



弄られ役回してしまって…と呟けば
聞いていたのか聞いていないのか関係のない言葉が返ってくる。



「…お前、あれ、マジかよ」



あれ、とはやはり『好み』と言ったことだろうか。
そりゃああれだけイジられれば、真意くらい確かめたくはなるよね…。



「嘘ではないよ?戦闘中意外と守ってくれたりして頼もしいし、背だって私より高いし、私緑色好きだから その髪だって素敵だと…
「あー!!分かった!分かったからもういい!!」



そう言ってまた顔を赤くして、帽子を深めにかぶり直すスパーダがあまりにも可愛くてちょっと笑ってしまうと笑ってんなよ!と怒られてしまった。
照れ隠しなのが分かってるから全く怖くはないけれど。







「……俺の好みも教えてやろうか」





少し落ち着いたのか、今度は意地悪そうな顔をしてそう言ってきたスパーダに首を傾げる。



「知ってるよ?アンジュでしょ?」

「はぁ!?ちげーし!!」

「え、じゃあイリア…?」

「だぁーっ!!!違うっつの!!お前だよ!お前!!!」


「……え、私?」



次に顔を赤くさせるのは私の番で、予想以上に恥ずかしいなぁと思いながら頬に手を当てる。



「そう…、なんだ。ありがと」

「…フツーに返してくんなよな、つまんねぇ」

「そういわれても…充分、照れるけど」



そう返したのをまるで気にしないように
まぁいいさ、と立ち上がって部屋に立て掛けてた剣を掴むスパーダ。
どこかに出掛けるなら、行き先を聞いておかなきゃと思っていたら





「惚れさせてやっから覚悟しとけよ!」





なんてかっこよく言って部屋を出ていってしまって、
行き先を聞きそびれてしまった私は、誰もいない部屋で誰に見られるわけでもないのに赤い顔を隠すように机にうつ伏せるしかなくて。


なに、それ、


もう……














なんじゃないの?と
自分の想像以上の気持ちに気付くしかなかった。








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