jump comic-D-

□「暇かよ、」
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『へー、合宿?』

『おう』

『どこまでいくの?』

『あー…今回は東京だな』

『東京かー…いいなあー』

『…』



平日だって普通に仕事してるってのに、こっちの都合で休み潰してるもんだから
羨ましそうな声をあげるなまえに 引け目みたいなものを感じて 思わず言葉につまる。



『…別に遊びに行くわけじゃねぇぞ』

『あ、そうだ!お土産買ってきてよー』

『はぁ!?土産って…合宿だぞ!あるわけねーだろ!』

『なんでもいいから!休みの楽しみがお土産ひとつなんだよ!?』

『あー、分かった分かった!』








合宿前にそんな約束をしちまったせいで頭を悩ませていれば、
先生に『女性でしたら、甘いものなんか喜ばれるんじゃないでしょうか』なんて言われて 思わず首を傾げる。



『…甘いもんなぁ…。いつも酒飲んでるイメージしかねぇけど…』

『それは烏養くんがお酒好きなのを知っていて合わせてくれているとか…』

『……』

『あれ?昔のマネージャーさんなんですよね?』

『…その発想はなかった』



そういえば…そうなのか。



と、先生に言われて初めて気付く。
そういやアイツとは飲みにしか行ったことねーな…。そりゃ酒のイメージしかねぇわ。
まぁ、会うのが町内会でだし 練習終わった後なんて飲み屋くらいしか開いてねーから それ以外あるわけねぇけど、
それでもいつも一緒になって飲んでっから、てっきりアイツも酒が好きなんだとばっかり…

まぁ…分かんねーけど、

昔っからあの調子だからな…と合宿前の会話を思い出して



…とりあえず好みも分からねぇ俺にいい案が浮かぶわけもなく、
今回は先生の案を取り入れてみるか、と思って家の近くで適当に買って帰った土産は
その日のうちに『これ超美味しい!ありがと〜!』とえらく上機嫌な写真のついたメールが来るぐらい好評で
先生すげぇな…と思いつつ なんとなく、『明日、体育館の点検で練習休みらしいから飲みに行くか』と返信する。

そういや店番頼んで1か月経つけど、まだ1回も約束の飲みにゃ連れてってなかったよな…と
送信した後、受信ボックスの一番上に表示されてる名前を見て思う。
改めて考えりゃ 約束しといて催促されたのが土産ひとつなんだから、やっぱ先生の言う通り上手く気でも遣われてんのか…?

つっても俺は…昔から、そういうのが上手い奴だった…みてーなことを気付けるような性格でもねーし
昔なんて今よりもっとボール追っかけてるかコート見てるかで……



それにしても、
甘いもんひとつで喜ぶなんて、コイツも一応女なんだな。



なんて、





「……。いや、バカか俺は」





何を今更、意味の分かんねーことを考えてんだ!と頭を左右に振れば
そんな俺に合わせたように、手の中で携帯が震えてびくりとする。

開いたままにしてた画面を確認すれば、メールを開くまでもなく
『え〜月曜から飲み!?全っ然行くけど!!』と表示されている受信ボックスにバカらしくなって







「暇よ、」



と思わず画面に話しかけた。










→03.「なんもねぇよ!」


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