jump comic-D-

□分からないけど
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「なまえ」



部活も終わってもう外も暗くなり始めた頃
部室でベンチに腰かけてる俺に背を向けて、何かを片付けているのであろう彼女の名前を呼べば
その作業の手を止めて、振り返る。



「何?」





「…もし、『今日で地球最後の日だとしたら』 なまえは何してすごす?」





「……」

「……」



何を思ってそう言ったのか、
それを聞いてどうしたかったのか、

自分でもよく分からないまま

瞬きを二度ほどして、俺を見るなまえに
わざわざ手を止めさせてまで聞くようなことでもなかったな、とそんな事だけをぼんやり思う。



「…珍しいね、キッドがそういうこと言うの」

「…そうだねぇ。今自分でもらしくないかなと思ってたところだよ」

「何かあった?」

「いや、こないだ熊袋さんとこの娘さんが企画した雑誌のインタビューがそんな内容でね。なまえならなんて答えたかな、とふと思っただけだよ」

「…アメフト関係ないね」

「…そうだねぇ」



なまえのそんな反応に、他にも 一番高かった買い物だとか、好きなタイプだとか
ちらちらと関係のないのが混じってたな…、なんて思い出しつつ そう返事をする。





「地球最後の日ね…んー…」



そんなことを聞いてどうするのか、とも思っただろうに なまえはそこに触れることはない。
初めて会った時から、彼女にはそういうところがあった。


初めて顔を合わせて『キッド』だと名乗った時も、
鉄馬との関係や家の事も、


何も聞かないで、今みたいに少し 俺の目を見て
核心には触れるでもなく ありのまま、接してくれる。

それが、どんなに心地よかったか。

…それを伝える日が来るかは、分からないけど。
まぁ、いつか…今を懐かしむような頃にでもなったら、話してもいいんじゃないか
なんて思いながら、顎に手を当てつつ思案する彼女をそっと見つめる。



「……」

「そうだなぁ…いつも通り…皆がアメフトやってるとこ、見てたいかな」



穏やかな表情と共に出されたその答えに
つられて緩む口元を隠すように、帽子を前に傾ける。



「……そっか」

「…口元が笑ってますけど」

「……」



鉄馬の様子もよく気にかけてくれてるだけあって、よく見てるよねぇ…やっぱり。

隠す意味がなかったらしい口元を、片方だけ更に上げて肩をすくめれば
なまえも同じように穏やかな笑みを強める。



「そういうキッドはなんて答えたの?」

「んー、…秘密」

「なにそれ」



そう言ってなまえは小さく笑っただけで、
やっぱり他に何を言うでもなく作業に戻る。

そんな背中を見て、少し首をもたげれば 外はすっかり暗くなっているように見えて
そろそろ着替えますかね、と重い腰を上げた。



雑誌を見られてしまえば分かることをなんとなく誤魔化してしまったのは



同じことを思ってた



そのことが、少し嬉しく感じたせいかもしれない。







『今日で地球最後の日だとしたら!何をして過ごしますか?』

『…そうだねぇ。…いつもと同じように過ごす、かな』







鉄馬やみんなと、いつも通りアメフトやって
それを見守ってくれるなまえと、こんな風に他愛のない会話を交わす。

そうやって 日が暮れて、



…望み過ぎたってロクな事がねぇ。



今は、それで十分だ。





「…そろそろそっちも着替えたら?送ってくよ」

「…送ってもらえるならもう少しやりたいかな…?」

「…仕事熱心だねぇ…。親御さんが心配するでしょうに。手伝うから明日にしなさいって」

「じゃあ明日にします」

「そう言って手伝わせる気ないよねぇ、いつも」

「うん。やっぱりバレてるんだ」

「バレてないわけないでしょうに…」



そうして呆れる俺を「着替えてくるね」と笑顔で言って置き去りにするなまえの背中を見送って、また一人肩をすくめる。



こんな毎日が続いていけばいいと願うのは



終わりがあると分かっているからか、

それとも



何か別の感情がそう思わせるのか







らないけど



今は、まだ…考えずにおくとしようかねぇ。







JUMP COMIC





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