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□奴隷女と死の外科医
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「…俺は飯を食えと言ったはずだが?」
「……」
「…いい度胸だな…」
シャボンディ諸島でシャンバールと共に
気紛れに拾ってきてやったこの女。
手当てを施し、食い物を与えても
食べるどころか口を開こうともしない。
今だって目線を一度よこしただけ。
島じゃ奴隷だったようだが…海賊船に乗せられてこの態度。度胸があるのか、表情ひとつ変えない所を見ると…怯え疲れて壊れちまってるのか。
「キャプテン、びっくりしちゃってるだけかもしれないよ?一緒にごはん食べようよ?ね?」
「うちのキャプテン、医者だからそういうとこうるさいぜ?そういえば名前なんて言うの?すーっげー美人じゃね!?」
「……」
無視されたにも関わらず、今晩は宴っすね!キャプテン!なんてはしゃいでるシャチは無視だ。
ベポに促されても尚、食事に手をつけようとはしない。
…どうも面倒なモノを拾ってきたようだな。
バラして直接体に入れるのが早いかと、刀を持った俺の気配に女はゆっくりと目を開けてこちらを見上げた。
「…やっと殺してくれるの?」
「……それが望みか?」
「…これ以上飼われ続けるくらいなら…殺してくれた方が、嬉しいなぁ…」
「え?かう?どういう……キャプテン?」
話を掴めていないベポの前へ手をかざす。
この船に奴隷なんて置くつもりは毛頭ねェが、
その生活に慣れきっちまってるこいつの頭じゃ
世界は『飼う側』か『飼われる側』か…
どちらかしか存在しないんだろう。
「…お前に選ぶ権利はねェ」
「…」
「いいか。まず、この船で俺の命令は絶対だ。そしてお前に与えられた選択肢はひとつしかねェ。この船で生きることだ。…この2つを、よくその頭に入れとくんだな」
「…?!」
言うが早いか、女の手足についたままだった鎖を
壊してやれば流石に女も表情を変えて、驚く。
「俺は部屋に戻る。その女に飯を押し込んどけ。」
「アイアイ!キャプテン!!」
「キャプテン、宴は?!」
「…やりたきゃ勝手にやってろ」
アイアイ!キャプテーン!!と上機嫌なクルー達の声を背に、自室へと歩を進めた。
奴隷を置くつもりは毛頭ない。
あいつらだってそのつもりだろう、分かってないのは当の本人だけだということだ。
そういや鎖を壊した時、随分と間抜けな顔をしていたなと思い出すと くっと喉が音を立てた。
奴隷女と死の外科医
思ったよりは楽しめそうだ
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