Beide gefuhle-D-

□分かってたんだ
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ボマーとの戦いで、微かに見えた希望を胸に次の封印の地とやらへ向かう。


そう、鬼柳のもとへ






「遊星…お前はまだ鬼柳を諦めていねぇのか」



鬼柳とのデュエルに臨む遊星の目を見れば分かる。
お前はまだ、鬼柳を救うつもりなんだな…。

確かに昔の鬼柳はあんな奴じゃなかった。
誰よりも俺たちを…ナマエを、大事にする奴だった。

あいつがおかしくなったのは…サテライトを制覇し終わった頃からだったか…












「…つまらねぇ!デュエルってこんなにつまらねぇもんだったのかよ!」

「クロウ…」



サテライトは制覇し終わったってのに、鬼柳だけはそれを認めねぇで
残党狩りだなんだって、戦う気のねぇ相手を捕まえて無理やりディスクを壊すような…そんなつまらねぇデュエルが続いてた。

今日なんか、年端もいかねぇガキ相手に…んなことできるわけもなく、鬼柳に見つかる前に逃がしてやるしかなかった。
今まで付き合いでやってきたが、俺にはもう限界で



「うわあああああ!!」

「!?」



逃がしてやったガキの叫び声が聞こえて向かってみれば、
鬼柳が倒れたガキを踏みつけようとしていて、俺は急いで止めようと鬼柳に飛びついた。



「やめろ!!…早く逃げろ!!」

「何、しやがるクロウ!!」
「だめ!京介…!」



鬼柳に殴られたと同時に、ナマエの声がして耳を疑った。

最近様子のおかしい鬼柳を心配して、ついて来たがったナマエを宥めてアジトを出てきたはずだ。
でも確かにナマエがそこに居る。



「ぐっ…バカ!危ねぇから来んなってあれほど…」

「ごめんね。 クロウ、大丈夫…?」

「ナマエ!一人でこんな所まで来たのか…?何かあったらどうするんだ」

「大丈夫だよ遊星、サテライトの統一は終ったんだし…」
「まだ終わってねぇ!!何しに来たナマエ、邪魔だからアジトに戻ってろ!」

「な…!こいつはお前を心配して…!」
「いいの、クロウ…ありがと」



鬼柳の言い草に俺がカッとなっても、ナマエが鬼柳に甘いせいで何の意味もねぇ。

ナマエは鬼柳を家族みたいに大切にしてて、


鬼柳…お前だってそうだったじゃねぇか。

それなのに…『邪魔』だ、って
いつからそんな風になっちまったんだよ。



「ごめんね、京介…でも、やりすぎだよ。あんな小さな子相手に…」

「うるせぇ、お前が口を挟むことじゃねぇ」

「京介…」
「…もう我慢できねぇ!デュエルってのはよ、誰だろうとどこだろうと、好きな時に楽しむもんじゃねぇのかよ!
俺たちに、お前に、それを奪う権利があんのかよ?!」

「なに…?」

「…俺は抜ける!!」



そうして俺は鬼柳に背を向けた。
これ以上、お前にはついていけねぇ。俺はもう誰からもデュエルを奪いたくねぇんだよ…!



「待って!クロウ…ほんとに…」

「ナマエ…」



…そうだ、こいつが、



「お前は…」



ここに、残るのか?なんて

視界の端でジャックが鬼柳達から離れていくのを見て、思う。
そんな言葉は何の意味もねぇって。


こいつは…、絶対に鬼柳から離れたりしない。


そんな確信に、言葉を濁して



「いや、……悪ぃな」

「……」

「…またな」

「……うん」



俯いてしまったナマエを前に
苦し紛れに、またな、なんて言い繋ぐしかなかった。

俺とジャックはそこで鬼柳と離れたが、遊星とナマエは鬼柳を諦めたりしなかった。

遊星は仲間や繋がりを大事にしてたし、
ナマエは…今のアイツには、鬼柳が全てだろうから。







それでもやっぱりナマエが心配で、
鬼柳が遊星を連れて外に出ている時を見計らって、一度だけアジトに様子を見に行った。



「クロウ…!」

「ちょいと荷物取りに来た…って、言うほど置いてねぇけどな」



別に必要なもんでもなかったし、そんなのはただの口実だった。

ナマエが鬼柳を特別に思うように、俺にだってナマエが特別だった。



その特別が同じかどうかは分かんねぇけど



それでも、鬼柳だったから
鬼柳もナマエを大切にしてたから、俺は何も言えなかった。

それで、こいつは幸せなんだと思ってたんだ。



「……ごめんね」

「…お前が謝ることじゃねぇだろ。…鬼柳は相変わらずなのかよ?」

「…うん」



けど、鬼柳がこいつを「邪魔」だって言うなら、黙ってられるかよ。





「……お前も一緒に来るか?」

「!」





言わずには、いられなかった。
その答えが分かり切ってて、それでも、ほっとけるわけなかった。



「このままじゃ あいつ、何始めるか分かんねぇ。もしお前に何かあったら…」
「ありがと、クロウ」

「ナマエ、」

「…でもね、京介が一人になっちゃうから…私は行けない」



分かりきってたことだった。最初から。
俺がいくら言ったって、こいつは鬼柳を見捨てたりしねぇって。



そんでナマエも、












ってたんだ




遊星が鬼柳の元を離れることも、
鬼柳が一人でもセキュリティに仕掛けてしまうことも、全部。














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