Beide gefuhle-D-

□消える
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ギッと椅子の音がした気がして、ぼやけた視界で周りを見渡した。

机にうつ伏せてる人影に、思い当たる名前を呟いく。



「…、ナマエ…?」

「!ごめん、起こしちゃった…」

「ん、寝れねーのか?」

「…そうじゃ、ないんだけど…」



歯切れの悪い返事に、体を起こした。



「え、寝てていいよ!」

「…どした?」

「…大丈夫だよ?」

「ばーか、どこがだよ」

「…」



いつまでも嘘がヘタクソで、バレバレなんだよ。



お前はまだ、思い出すんだな。

鬼柳のことを。




「ほら、どうした?」



ナマエの隣りに座って、片手を握りながら理由を聞けば
クロウには敵わないなぁ、なんて俯きながら呟いた。



「…起きて、クロウが居なかったら、って、思っちゃっただけなの、」



戻らなかった鬼柳のことを思い出して、俺に当てはめてる。

分かってる、コイツの根本は鬼柳だ。
…今でも。



「…ばーか」

「うん、」



それでも、お前が乗り越えられるまで
一緒に幸せになれる奴に会えるまで

俺が支えてやれるように
守ってやれるように、なるから



「俺がお前に何にも言わねーで、どこも行くわけねぇだろ」

「うん、」



今はもうちょい、この場所で



「それに何があったって、俺が帰ってくるのはここだ。…絶対帰ってくるから、んな顏すんな」

「うん、待ってる。ありがと…クロウ」



待っててくれ。



「おう…」





寂しそうに微笑んだナマエを見て、思う。



ずっと一緒に居よう、

なんて約束ができたら


もっと安心させてやれんのか?



アイツだったら、鬼柳だったら…分かんねーでもそう言えたんだろうか。
なんてどうしようもない考えを、頭の隅に追いやった。

……会わせてやれなくて、ごめんな、

でも、お前との約束は絶対守るから。









『絶対帰ってくる』







私は何度、その言葉を聞いたのかな。

私はいつも、甘えてばっかり、迷惑かけてばっかり、…だから、せめて泣かないようにしようって決めてても
結局、クロウに支えてもらってばっかりで。

これじゃダメだって分かってるのに、
いつまでも、もう居なくなった京介から離れられなくて、

結局、何もできなくて。




私が不安な時、クロウはいつも安心させるように約束をくれる。

今日もそうして、BADの方へ見回りに行くと出かけていった。



もっと、しっかりしなきゃ…
いつか、少しでも何か返せるように
手助けになれるように、なりたいから。








「なにあれー!」

「ナマエねーちゃん!何か黒い煙みたいなのが近づいてくるよ!」



子供たちの声に我に返る。

そうだよ、しっかりしなきゃ。
クロウが居ない間は私が子供たちを守るんだから。



「…煙?」

「早く早く!」



子供達に手を引かれ、外に出ると昼間だというのに真っ暗になっている空。
BAD方面はもうその殆どが黒い靄に包まれてて、どんどんこっちに近づいてくる。



「…なに、これ…」

「恐いよ、ナマエおねえちゃん…」



混乱して騒ぐ皆を強く抱きしめながら



「大丈夫、大丈夫だからね!」



無意識に目を閉じて、








結局、何もできない自分を恨んだ。








ごめんね、みんな
ちゃんと守ってあげられなくて

ごめんね、クロウ
皆を守ってあげられなかった
待ってるって言ったのも嘘になっちゃった

おかえりも、言えそうにないみたい



ごめんね。








もう会えないかもしれない恐怖と
私が居なくなることで見つけられるかもしれない、彼の幸せな未来への希望と安心感が


混ざり合って














クロウは、幸せになってね。
わたしは、













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