Magazin&Champion-D-

□決意も込めて
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「樹」

「はい、何ですか?鳴さん」

「俺に何か言うことあるんじゃないの!」

「え…?」



仁王立ちで俺の前に立つ鳴さんに 返事を躊躇していれば
後ろからも俺を呼ぶ声がして、振り返る。



「い、つ、き!」



「!」

「出た!!」

「え〜何ですか鳴先輩、人をお化けみたいに〜」



振り返った拍子に、頬には刺さったのはみょうじさんの人差し指で
やられた、というか恥ずかしいというか…なんか思わず変な顔になる。



「はーい、ひっかかる〜可愛いよね〜」

「みょうじさん……」



俺の後ろからひょいと顔を出して、いたずらっぽく笑って見せるみょうじさんに
そっちの方が可愛いから、と手放しで思えるようになったのは やっぱり付き合えたからだとは思うんだけど…どうしても、顔に出てしまう。



「ちょっと!なに二人の世界作ってるわけ!?俺居るんだけど!?」

「え!?いや、作ってないですよ…!」

「作ってるじゃん!イチャイチャしてさ!!」

「してないですって!そんな名前呼んだだけで…」

「超ニヤニヤしてるじゃん!!!まさかそれで誤魔化してるつもりじゃないよね!?っていうか散々くっつけようとしてあげた俺に報告ないってどういうこと!?」

「私たち付き合うことになりました〜!」

「どっちから!!」

「私からでーす!」

「はぁ!?まどろっこしいし時間かかりすぎな上に!なまえからって!!樹もっとしっかりしろ!!」

「はい、頑張ります…」



二人の勢いとテンションに押されてそう答えたものの…
みょうじさんはこうやって誰にでも交際宣言するし
突然『樹』って呼ぶようになるし
気を抜けばさっきの悪戯みたいなこともしてくるし
距離も、近いし



…慣れないなぁ、このペース…



「そんなんじゃ一生尻に敷かれるよ!!」

「……」

「何その顔!それは仕方ないんじゃ、みたいな!男が引っ張られてどーすんの!捕手がそんなリードへたくそでいいわけ!この先やっていけないよ!!」



考えを見抜かれてるような忠告に「はは…」と笑って誤魔化す。

常に先を行かれてる気がしてならない俺としては、みょうじさんをリードできる気なんて全然しなくて。

すごく 近くに居られることにも
すぐには、慣れそうもなくて。

多分振り回されることの方が多いけど、



それでも、やっぱり





一番好きで居て欲しい人だから、





「一生、尻に敷かれてくれる気あるの?」

「!」

「将来私と結婚してくれるって意味になっちゃうけど?」



いつかは格好良くみょうじさんをリードできるように、



「…うん、俺が幸せにできるように頑張るよ」



そんな自分への







も込めて



「カッコイイこと言う〜!鳴先輩、私たち婚約しました!たった今〜!」

「えっ!?」

「言わせたんじゃん!!何!?怖いんだけど!樹、別れとくなら早い方がいいって!今しかないよ!!」

「残念!手遅れでーす!」

「…とりあえず、まだ付き合い始めたばっかりなんで…二人とも落ち着いて…、」

「はーい!」

「俺ちゃんと言ったよ!?後で後悔しても知らないからね!!」









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