Magazin&Champion-D-

□俺なんかより
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「…多田野くんってたまにすごーくカッコイイこと言うよね〜」





「!!」



思わぬ方向から聞こえてきた声にびっくりして横を向けば
そこにはフェンス越しから「お疲れ〜!」と手をひらひら振るみょうじさんが居て



「どこが!?精神論だよ!!っていうか俺の方が100倍カッコイイし!!」

「なんで急に張り合ってんすか…」

「ただの事実だし!!」

「……。っていうか、みょうじさん、いつからそこに…」

「『必ず止めます!たとえ この身が砕けちろうと!』からかな!」

「……」

「あは、もしかして照れてる〜?私はそういうの結構好きだけどな〜」

「え、」



…いや、別に深い意味とかないだろうし
鳴さんに無茶苦茶言われてるからフォローしてくれてるだけだと思うし、

なんて考えてると、鳴さんのププッっていう笑い声が聞こえて
嫌な予感がする…と思いながらも正面を見れば、にた〜と笑う鳴さんがグローブで口元を隠しながらこっちを見ていた。…全然隠せてないけど。



「ふ〜ん!へ〜え!よかったじゃん樹〜!なまえそういうの好きだってさー!もう1回言ってやれば?」

「言いませんよ!!」

「『自分にも捕手としての意地があります!』でもいいよ?」

「みょうじさんもやめて、」



あはは〜、怒った?とまるで鳴さんにするようにからかってくるみょうじさんに
「別に怒ってないけど…」と返せば「多田野くんは大人だね〜」と笑う。

そういうのでもないけど…って、言ってもきっと「いやいや、鳴先輩とは大違いだよ〜!」なんて言って流される上に いつものやつが始まるんだろうし…大人しくしておこう、と黙っていたのに



「鳴先輩!多田野くんが取れないのは鳴先輩のせいなんですから、ちゃーんと投げてあげないと駄目ですよ〜?」

「!?」



なんてみょうじさんが言い出すから、慌ててみょうじさんと鳴さんを交互に見る。



「はあ!?なんで俺!!樹じゃん!!」

「鳴先輩が口ばかり動かして十分な練習させてあげないからですよ〜?バッテリーって『投手とその球を受ける捕手』2人いて成り立つんですから、できないことがあったとしてもそれは片方のせいにはならないと思うんですよね〜。原田先輩の時とは違って、今は鳴先輩の方が先輩なわけですし〜?つまり何が言いたいかと言うと〜、今の鳴先輩は自らの指導力不足を公言しているようなもので…」

「あーもーうるさいなーー!!投げてやればいーんでしょ!投げてやれば!!」

「分かってもらえて光栄でーす!後は頑張れ多田野くん!」

「え…あ、うん、」



今のは、俺のために言ってくれたんだろうか、とも思ったけど
それよりも鳴さんと対等(?)に話せるみょうじさんを、やっぱりすごいと思う。

俺なんてまだ鳴さんに壁としか思われてないっぽいし…すぐ話そらされるし…
まぁ、それは自分に実力がないから仕方ないとは、思ってたけど…





今のを見て、やっぱりこのままじゃ…いけないよな。と思う。







「あの、みょうじさん!」

「ん?多田野くん、どうかした?さては鳴先輩にいじめられたとか?」

「そうじゃなくて…、ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」

「どうぞどうぞ」

「鳴さんとさ、どうやったら…えーっと、みょうじさんみたいに上手く話せるのかと思って…」



そんな俺の言葉に、みょうじさんは瞬きをした後、小さく首を傾けてんー…と唸る。



「…多田野くん真面目だから、私と鳴先輩みたいなコミュニケーション方法は合わないと思うよ?」

「…そう、かもしれないんだけど、」

「いいんだよ、多田野くんは真っ向勝負で!煽るのは私に任せて!」

「別に煽りたいわけじゃ…」

「多田野くんは今まで通り、まっすぐ鳴先輩を追いかけてくのが合ってるよ!」

「………」



でもそれじゃ、今と変わらないんだよな…多分。
本選も、もう目の前だし 今からどうこうできることじゃないのかもしれないけど
練習する以外でできることって言ったらこれくらいしか…



「…あれ、ダメ?んー、なら…もっと積極的にいってもいいと思う」

「…」

「尊敬してる先輩だからって、遠慮することないよ。鳴先輩とバッテリー組んでるのは、多田野くんなんだから」



黙り込んでしまった俺に合わせて、少し静かにそう言ってくれたみょうじさんは
普段は鳴さんとあんな風にしてるけど、



「…ありがとう。ごめん、帰る前に」

「いいよ。どーいたしまして!」



本当はきっと








んかより



ずっと大人なんだろうな、と思った。










→04.そんな考えは


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