American lemonade-D-

□Cacao Fizz
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準決勝の王城戦をなんとか勝って
翌日泥門の部室へ行けば、何故か部室の中も外もお花だらけ。

そのお花に添えられるように渡された白秋のマネージャーさんからの手紙は、セナへ宛てたもので
会ってお話しできませんか?というその内容に、皆もうすっごく盛り上がっちゃって…お台場のヴィーナスフォートまでついて行くっていうから

複雑な表情をした鈴音ちゃんも心配だったし、まもりお姉ちゃんも行くっていうから一応ついて来た…けど…


やめとけばよかった……と柱の影で後悔する。
だって、待ち合わせ場所に先に現れたのは白秋のマネージャーさんじゃなくて



りっくんだったから。



そのすぐ後に現れた白秋のマネージャーさんの姿を見ると、なんだかその場に居づらくなってしまって
できるだけ見ないようにしよう…と柱から一歩奥へ下がっても
一瞬見えた私服姿もかっこいいなぁ、とか
巻いてたストールこの前選んだやつかなぁ、とか考えちゃう頭を横に振った。



「どうしたの?このりちゃん」

「…な、なんでもな」
「いいのかよ、このり!陸の奴が他の女と会ってんぞ!」

「!?いやいやいや…!モン太くん何言って…!?いいも、何も…!私とりっくんはそういうのじゃなくって…!それにセナだって一緒だし…そもそも私にそんなこと言う権利なんてなくって…」

「いやいや寧ろあるレベルでしょ〜」

「ないよ!鈴音ちゃんまで…。りっくん優しくて私が頼りないから…心配してくれてるだけだし、いつも気遣わせちゃってばっかりだし、私なんにもできないし…それに、りっくんの隣には白秋のマネージャーさんみたいに大人っぽい女の人の方が似合う気がするっていうか似合うと思うっていうか…」

「「でた!ネガティブ!」」

「そんなことないよ、このりちゃん!私は昔から二人はお似合いだなぁって思ってたよ?」

「まもり、お姉ちゃん…」



まもりお姉ちゃんのその言葉に、思わず俯く。
まもりお姉ちゃんがそんな風に言ってくれるのは嬉しい。けど、私は…


そんなの、一度だって思ったことない。


私は、まもりお姉ちゃんみたいに色んなことできたりしないし
鈴音ちゃんみたいな行動力も積極性もなくて
自信もなくて、心配してもらってばっかりで……この前だって泣いちゃったし
りっくんは優しいから嫌な顔しないで心配してくれるけど
迷惑とか かけてるんじゃないかなってどうしても、考えちゃって
そしたら余計に何もできなくて


隣に並んで似合う自信なんか、全然 なくて、



私より、まもりお姉ちゃんの方が似合うんじゃないかって…昔から思ってた。



まもりお姉ちゃんは、私の憧れで

なんでもできて、しっかりしてて、頭も良くて、優しくて、綺麗で、可愛くて、
本当に素敵なお姉さん、って感じがして
一緒に遊んでもらった時に妹に間違われたりすると、すっごくすっごく嬉しくて

本当に大好きで。

こんな人になりたいなぁって、いっつも思ってた。



それは、勿論りっくんに出会う前からの
私自身の気持ちでもあったけど

りっくんが好きになる人は





きっとまもりお姉ちゃんみたいな人なんだろうなって





そういう気持ちも、途中から きっと混じってた。





「…このりちゃん?」

「あ、なんでも…」



なんでもない、そう言い終わる前に
セナ達の居る方からものすごい音がして、慌ててそっちを覗けば

セナ達の座っていたテーブルとイスを叩き潰す峨王くんと
白秋のマネージャーさんを助けるセナと
変わらず、椅子に座ったままのりっくんの姿に 無意識に小さく息を吐く。

どっどっどっと鳴る胸を押さえて
何を思えばいいのか分からないまま、様子を見守って思ったのは



やっぱり、見るべきじゃなかったなぁ、ってそんなこと。



白秋のマネージャーさんに手を差し出して、立ち上がるのを支えてあげて
ドリンクがかかってしまった彼女にハンカチを渡したりっくんは

やっぱり




誰にでも優しくて、紳士的で、素敵な男の子だ。




そう思うと胸が少しだけ痛くなる。その理由は分からないけど
そのまま去っていくりっくんの背中を、今はどうしても








いられそうになくて



ぎゅっと強く目を閉じた。



Cacao Fizz-カカオフィズ-
【恋する胸の痛み】







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