American lemonade-D-

□White Russian
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「そういやセナ達はなんで服なんて見に行ってるんだ?」

「えっと…表彰式とかに向けて…?それらしくしなきゃ、って鈴音ちゃんが…」

「鈴音…?」

「えっと…応援の…チアガールの…!こ、この右側の子!」



差し出された携帯に表示されてる写真を見て、あぁ…そういえば居たような…なんて思ったけど
同じようにチアガールの衣装を着たこのりに挟まれて 真ん中に写っている人物に小さく笑う。



「…まも姉まで何やってんだ…?」

「まもりお姉ちゃんも鈴音ちゃんに着せられてて…折角だから一緒に撮ってもらったの!これも!」

「…これ、体育祭の時の…」

「うん!あの日のまもりお姉ちゃんすっごくかっこよかったから…頑張ってお願いしたの!」

「…ホントまも姉のこと好きだな、このりは」

「うん!」



楽しそうにまも姉の話をするこのりを見て、少し安心しながら 綺麗に並べられた服や小物を眺める。
暖かいミルクティーを飲んで落ち着いたのか、表情も柔らかくなったし敬語もとれた。

『緊張して』なんて言われた時は可愛いこと言うなと思ったけど、
顔を見れば、そういうことじゃない事くらいは分かったから。



「でも、そういう風に並んで写ってると姉妹みたいだな」

「…本当!?」

「髪、まも姉と同じ色だしな。染めたんだろ?よく似合ってる」

「…ありがとう、りっくん」



俺の言葉に、目を細めて嬉しそうに笑うこのりの表情が
昨日のことを思い出させる。

泥門が勝って、関東大会への出場を決めたあの時、
俺は改めて、セナに負けたのも仕方ないなって思わされたんだ。

フィールドの外から
泥門ベンチで嬉しそうに涙を流してるこのりを見て




今のセナは、このりにあんな表情をさせてやれるのかって




そう思ったから。





「そういやセナとは…付き合ってないのか?」

「…え!?いやいやいや…!」

「高校まで同じで、その反応もセナとおんなじだしな。セナもよくそれ言ってたろ」

「え、そう…かな…?セナのが移ったのかな…?」

「……」



そりゃ、昔からセナとの方が仲良くて
俺が居ない6年の間もずっと傍に居たんだろうけど


それでも


俺だって自分の気持ちにくらい気付いてる。

あんな表情されちゃ


俺だってって思うだろ。



「で、でも!セナとはそういうのじゃなくて…」

「冗談だよ。付き合ってたら今日来てないだろ?分かってるって」

「……」

「このりはどっちの色が好きだ?」

「え!?わ、私…?ええっと………こ、こっち…かな…」



なんとも言えない、って顔してるこのりの前に 色違いのストールを差し出して答えを待てば
俺の様子を何度も伺いながら おずおずと俺の髪色に近い方を指さした。



「じゃあこれにするか」

「えぇ!?いやいやいや、あのっ、それは、りっくんが着けるんだし りっくんの好きな色にした方が…!それに、持ってるお洋服に合うかどうかとか、その、」
「携帯鳴ってるぞ?」

「う、あ、お母さん、 だけど、でもっ」

「買ってくるから、店の外で待っとけよ」

「り、りっくん…」



諦めて もしもし…、と電話をとって店外へ向かうこのりを見送って

たまには こういうのもいいな、なんて思いながら会計へ向かう。
本当は今日も、学校が終われば家に帰って 朝方まで研究用のビデオとにらめっこ…なんてそんなつもりだった。

息抜きに出かける予定もなければ
さっき返してもらったハンカチも、いつだってよかったのに

気付けば

『それなら、少し会って話さないか?』

なんてメールを返してた。







「電話、大丈夫か?」

「う、うん。もう暗いから駅まで迎えに来てくれるって」

「なら駅まで送る」

「えっ、と…ありがとう…。…あの、本当に私が選んだ方買っちゃったの…?」

「買ったよ。あと、これはこのりに」

「……?」



差し出された袋を受け取ってから、え!?と間の抜けた反応を返してくるこのりに小さく笑う。



「え、な、なんで…」

「今日付き合ってくれた礼に、かな」

「それは…!私がまたお話ししようって言ったのに話かけられなかったせいで…、寧ろ付き合ってもらったのは私の方っていうか…そんな、何か貰うような、そんな…」

「外でる前に開けてみろよ」

「、……。」



言われるままに袋を開けるのを、ホント素直だよな、と思いながら見ていれば
このりが選んだストールと 似た色の手袋を見て

ふわ、っと表情を緩めた。



「…かわいい…、手袋……じゃ、なくって…!これ、」

「そんないいもんじゃないけどな。今日着けて帰るくらいにはいいだろ?」



そんな俺の言葉に このりは小さく首を振って



「ちゃんと 大事にする、」

「……」



「…ありがとう、りっくん」



プレゼントを胸元に抱えながら、目を細めて嬉しそうに微笑むその表情に
自然と、笑みがこぼれる。


多分俺は、次に進む前に その表情を見ておきたかったんだ。
試合に勝っても、俺じゃそんな顔させてやれないから。

チームが違うからだって分かってても

せめて、



フィールドの外でくらい 俺にもそうさせてほしくて。





「すっごく、嬉しい…」

「…ならよかった。 よし、帰るか」

「うん!」







やっていつも



笑っていてほしくて。



White Russian-ホワイト・ルシアン-
【愛しさ】







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