American lemonade-D-

□Kiss of Fire
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「がははは!対決前にわざわざ運動能力お披露目の会を開いてくれるとはなあ!」

「こんな偵察意味ありますかねぇ…」



ウチの監督の笑い声が響く中、体育祭の準備が進む 泥門のグラウンドを眺めて帽子を被りなおす。
あの策士な彼が 見なくても分かる事以上の情報をそうやすやすと見せるとは思わないけどねぇ…

そうは思っていても、監督を放っておくわけにもいかずいつも通り着いて来たわけだけど…



「にしても珍しいねぇ…、陸が監督についてくるってのは」

「アイシールド21を見ておこうと思っただけですよ」

「…相変わらず研究熱心だねぇ」



いやまぁ、目的はそれだけじゃないんだろうけど…わざわざ聞く必要もないかねぇ。
陸のことだから彼のプレイが入ってるビデオはもう穴が空くくらい見てるだろうし…
監督も陸もよくやるよ、ホント。



「…りっくん……?」



そんな俺たちの前で小さな女の子が足を止めて、
まぁ、多分陸のことを呼んだんだろうと 横目で陸の様子を伺えば
勢いよく立ち上がって土手のようになっている斜面を降りていく、

やっぱり、特に心配するようなことでもなかったみたいだねぇ、とその背中を見送った。



「やっぱり、りっくんだ…!お、おはよう!今日はどう…」
「このり…りっくんはやめろって。もう子供じゃないんだからさ」

「え、えっと……?でも、あの…あ……か、甲斐谷 くん……?」

「……分かった。今までのままでいいから、そんな顔するなって」

「で、でも…」

「いいよ、そのままで」

「……うん…」



どっかで聞き覚えのある名前だ、とよく見てみればアメリカでセナくん達と一緒に居た女の子で
陸とも知り合いだったんだねぇ、なんて思っている間に
随分とまぁ、意気消沈させちゃって…。
陸が照れるなんてのも珍しいけど…彼女には悪いことしちゃったかねぇ…?と思い、少し口を挟む。



「…こりゃまた、可愛らしいお嬢さんが挨拶に来たもんだ」

「…キッドさん…?」

「…深い意味はないって。そんな顔しなくても」



空気が変わればいいかと思ったんだけどね…。
怪訝な顔をして振り返った陸に、思わず苦笑しながら
帽子を目元まで深く落として、そのつもりがないことを示す。



「キッドさん!監督さんも…!おはようございます!…今日は西部さんお休みなんですか?」

「んー、まぁ、そんなとこかね」



本当に陸のことしか見えてなかっただろう彼女が、俺と監督に気づいて深々としたお辞儀と挨拶をくれる。
まぁ、わざわざ偵察に来た。なんて言う必要もないだろうし…それに気づかないくらいのんびりしたお嬢さんみたいだから、適当に話を合わせておく。

まぁ、陸ならこれで冷静になるでしょ。



「…このりは競技、何に出るんだ?」

「え?えっと…私は午前にフォークダンスと、100m走と…午後は大縄跳びだけ…」

「ふーん…100m走…。そういや球技とか団体競技みたいなのは苦手だったか」

「うん…。今も、苦手…」

「じゃあ100m走で頑張って1位獲らなきゃな」

「え!?いやいやいやっ…!1位は、むりだよ…」

「大丈夫だって。見ててやるからさ、頑張れよ」

「……………む、無理だけど…がんばる…」

「よし」



色んな方向に視線を泳がせた後、絞り出すようにそう答えた彼女に対して 満足気に微笑む陸はいつも通り。
それでも珍しく見せた歳相応な態度に、若いってのはいいねぇなんて歳不相応なことを考えた。



「…ちゃんと見ててね…?」

「見てるよ、絶対」

「……じゃあ、がんばる!えっと…また後でお話しようね?」

「あぁ」



改めて意気込む彼女は、なんとも健気で
やわらかく交わされる約束に、思わず笑みをこぼせば 戻ってきた陸に呆れた顔をされる。
まぁ、それも照れ隠しみたいなもんかもしれないけどさ。



「…何ですか、キッドさん」

「いやぁ、中身まで可愛らしいお嬢さんだと思っただけだよ」

「…可愛いですよ、昔から」





そんな牽制のようにも聞こえる言葉も
走っていった彼女には、まだ伝わらない愛の言葉。





「…熱いねぇ」



まぁ、さっきの彼女の様子を見ていれば特に心配する必要もないだろうけど…なんて思いながら


しばらくたって始まったフォークダンスの、ステップを必死になぞる彼女と
そんな彼女と彼女の相手を見て目をそらすわけでもなく、渋い顔をする陸に小さく笑った。

そんな顔するなら、見なきゃいいだろうに…ってまぁ、そりゃ無理な話か。



「やれやれ…」



この可愛らしい恋が








のは



一体いつになるんだろうねぇ。



Kiss of Fire-キス・オブ・ファイア-
【情熱的な恋】







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