Gerade-D-

□進む道
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完っ全にきっかけ逃してしもたな。





告白の。





クリテを最後にオッサンも金城さんも受験勉強で練習来んくなって
心さんは部活来たがっとったけど、おっさんらに諭されて流石に勉強し始めたみたいや。
そしたら顔合わすんて、学校の中で偶然会うた時くらいしかあらへんくて
一応連絡先知っとるけど 勉強の邪魔したらアカンと思うと

もう、大学決まって卒業前とかにならな ゆっくり話するタイミングもないんやろなって思てたけど

そうそう思った通りにはならんらしい。



「今ちょっとだけええすか?心さん」

「!章ちゃん!」



へにゃって笑っていつもみたいに飛びついてくる心さんを好きにさせる。

ちょっと久しぶりな気するわ。この感じ。
たった数日 部室におらんかっただけやのに。

たまらんな、なんか。

そんな気持ちでちょびっと、ほんの一瞬だけ、頭を預ける。



「章ちゃん?」



そんな一瞬でも何かに気づく。
それでも別にどうしたとか、そんなんなんも聞かへんとまた、抱きしめてへにゃっと笑う。

そんな心さんを見たら、なんや落ち着いた。


めっちゃ動揺したんや、正直。
スカシに オールラウンダーやれ言われて、
一瞬でも、迷た自分に

どうしたらええんか分からんくて。



この人やったら、ってどっかで思たんか
つい 会いに来てしもた。



「心さん、」



それでも、
強がれ、強がって見せや、めいっぱい
これ以上カッコ悪いとこ、見せられへんやろ。



「なーに?」

「ワイ、近いうちにちょいと大阪帰ろかな思とって!まぁ、手嶋さんの許可はこれからなんやけど…心さん 土産何がええか聞きにきたんすわ!」

「大阪!お土産!…うーん」

「美味いもんぎょうさんありますよ〜」

「うんとね、んーと……いいよ?」

「?別に遠慮とかいらんですよ?なんでも食いたいもん言うてくれたら…」



『土産』て聞いた瞬間は 目輝かした思たのに、反応が悪くて首を傾げる。
受験勉強で疲れとるんか?とも思たけど、そういう感じでもないし…と様子を伺っとればちょい言いにくそうにワイを見る。



「…じゃあ、ね」

「?」



「帰ってきたら、最初に元気にただいまって言いに来て欲しいなあ」



「、」



せや、この人こういうのには敏いんやった、
そんなん言われたら、一瞬で崩れそうになる。

一歩、引いてまいそうになる足を留めて
なんかごまかそうにも、次の言葉が出てこーへん。


知らんはずや、誰にも言うてない。
せやのに



「……」

「大丈夫!」

「なに、」


「章ちゃんはどこに居ても、まっすぐだよ!」



何で、全部知ってるみたいに話すんや。



どこにおってもまっすぐ、て


そらそうや。
それが、ワイがずっと憧れてきた
ワイが進むはずの、まっすぐな 道なんや


ワイがスプリンター、やめられるわけないんや。


それを、はっきりさせるために帰るんや。
心決めて帰ってきて、アホか!ワイがスプリンター辞めるなんか、捨てるなんか、ありえへんに決まっとるやろ!て
はっきりスカシに言い返すために、行くんや。



「章ちゃんが頑張るの、応援するよ!」

「……」



この人は…、せやな。

ワイが万が一
スプリンターやめることなったとしても



きっと応援してくれる。



せやけど

それやったらワイはもう、
2番や3番では我慢できそうにないんすわ。



「章ちゃん?」

「…せやったら心さん、誰よりも一番近くで、ワイのこと一番に応援して下さい」

「…いちばん?」



そう、一番や。

オッサンよりも、前髪先輩よりも、誰よりも 一番に。



「……ホンマは…オッサン超えてから、て思てたんやけど…中途半端に言うんは性に合わんので言わせて下さい」

「?」







「ワイ、心さんのことめっちゃ好きや」







「私も!」



それは分かっとる。こんだけ懐かれたらイヤでも分かる。
でもこの人の性格上 それが



「心さんの『それ』は、男としてか、後輩としてか、どっちすか?」



ワイにはその違いが分からへん。



「…?」

「ワイは心さんに彼女になって欲しいいう意味で言うた。せやから心さんの一番になりたい」

「いちばん…」

「…答えは、大阪から帰ってきた時に聞かせてもらいますわ」



今は聞かれへん。

負けっぱなしで、
進む道も決まっとらん。

そんなんで何応援してもらうねん。
そんな情けない男になりたないし、何より

自分の心にウソはつきたない。





はっきりさして帰ってくる。

その行き着いた先がどうなるかはまだ分からんけど、



「帰ったら、絶対一番に会いに来るんで」



もし何か変わるんやったら



「せやから、それまで、待ってもろてええすか」

「…うん、待ってる」



せめて、
そっから、始めたいねん。



「…ほな、ワイ部活行きますわ!」

「うん、いってらっしゃい!」














はっきりさせて、帰ってきたらもっかいちゃんと好きやって言うんで。
その時は、ワイを一番好きでおってくれるんか教えてください。





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