Gerade-D-

□どうしても
1ページ/1ページ





ロードレースのシーズンは春先3月から11月
この湾岸クリテリウム、ワイらには今年最後のレースやけど
オッサンにとっては今日が高校3年間で最後のレースや。


正直オッサンが部からおらんくなって 卒業してまうなんて想像できへん。

いつも声でかくて、態度でかくて
ゆずるいうことを知らんで
カッコつけで、強くて……

そのオッサンが言うたんや、ワイに。



『引き継げ』て。



あのオッサンがや。
しかも心さんのことまで出されたら
答えなんか考えるまでもなく決まっとるやろ!


ペダル回して、積み重ねて
今日こそは、って気合い入れて


今年最後の
オッサンと走れる、最後のレース!!

超えるなら、ここしかない!
今日がその最後のチャンスや!!


このレースで…オッサンに勝って、無口先輩に勝って
1位とって そんで


カッコよう心さんに告白する!!



そのつもりで、





『心さん!今日のレース終わったら、ワイの話聞いたって下さい!』

『…今は?』

『いや、終わってからで!』

『終わってから!わかった!じゃあ先にレース 頑張ってね、章ちゃん!』

『当然!ワイが勝つんでしっかり見とったってくださいよ!!』





そのつもりで、そう言うた。








「迅、おめでとーだね!」



でも結果はコレや。

心さんがオッサンにかけるその言葉が更に突き刺さる。
あー聞きたない、

自分に向けられてへんその言葉を
一番近くで聞くんはもうウンザリやったのに 何負けとんねん…


そんな気持ちで背を向けてみても、その人はお構いなしに飛んでくる。



「章ちゃん、おつかれさま!」

「あー…」

「あとすっごい、すーっごいちょっとだったよ!すごかったよ!」

「すごいしか言えてへんでー」



それでも、いざ声をかけられるとやっぱどっか嬉しいて、気が抜けて
そんで、


思い出す。


走っとる最中は勝つこと以外頭に無うて忘れとったけど、



「お話、今きく?」



ワイ告白するつもりなんやったー!!
アッカン!!勝つ気満々すぎて、負けた時のことなんか考えてへんかった…!
いや負けた時のことなんか考えへんやろ普通!!
あーもーホンマなんで負けてもうたんやワイのアホ!!

どうする!どないする!言うか!?いま!言えるか!?



「あー…話な!話…話…」

「?」



…1年生レースではスカシに負けて、
インハイ優勝した言うても1日目のファーストリザルト オッサンに取られとるし、
3日目なんか ぶっ倒れて心さん泣かしたし、
今日かて結局…オッサン 超えられへんかった。


ワイ 心さんに、何もええとこ見せれてない。



「話…な、なんやったかなー…!」

「レース頑張ったら忘れちゃった?」

「カッカッカ!そーみたいっスわ!すんません!思い出したらまた言うんで聞いたって下さい!!」

「うん!」



こんなんで、何言うねん。
そう思たら誤魔化すしかできんくて

こんなんで誤魔化されてくれんの、心さんだけやけど。



カッコ悪すぎるやろ、自分…

先のこと考えたら
時間ないんは分かっとる、けど








しても



言われへんねん、今は。










GERADE


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ