Gerade-D-

□なくさないように
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「章ちゃんは、絶対赤!」

「まきちゃんは絶対緑だ!」

「迅はね、オレンジ♪」

「坂道は黄色だな!」

「俊ちゃんは青だよね」

「金城は?」

「真くんは…う〜ん…」

「黒、だな!」

「かぁっこいい〜〜!」



そんなふうに、それぞれに合う色を あいこちゃんと選んで買った お揃いのボトル。


インターハイ優勝のお祝いと、お疲れさまの意味を込めてみんなに何かプレゼントしようと



そう思ったのは迅の一言だった。



インターハイが終わった帰り道、あいこちゃん、裕くんと別れて
明日からの休みはどうするとか、次のレースの予定、次のキャプテンのこととかそんなことを話しかけても
疲れてるから適当な返事しかしなかった迅が 家に近づいた頃



『ありがとな』



って言って
どしたの?って聞いても『なんとなくだ』って言うから
それ以上なにも聞かないでそっかって答えたけど

その言葉が私には、
なにかが終わったみたいに聞こえて

インターハイが終わったのはそうなんだけど、
でも、そんなひとつのことじゃなくて




なにか、色んなことの区切りのような気がして




色んな気持ちが浮かんでくる気がするのに
なにも言葉には出てこなくて

それでも、ありがとうって言ってくれた迅に、なにか返したくて
なにか繋がるものを残しておきたくて、プレゼントをあげることにした。





休憩しに入ったカフェで、ボトルの入った袋を眺めながらそんなことを思い出してたら
机に出してた私の携帯が鳴って、私もあいこちゃんもはっとする。



「…今、みんな秋葉原に居るんだって!」

「やはりそうか。坂道の好きな所だと言っていたからな、そんなことだろうとは思っていたが…」

「迅、大丈夫かな〜」

「わはは!巻ちゃんもきっとうろたえているに違いない!!」



メール画面を閉じて、待ち受けに戻れば

インターハイ優勝したあの日
表彰式の後、純ちゃんにお願いして撮ってもらった
迅と、章ちゃんと、3人で写った写真が表示される。



「…ニコニコして…また待ち受けを見ているな、ここちゃん」

「えへへ」

「今は良いが、部室では程々にな!」

「?」

「そんなここちゃんを見てニヤニヤする鳴子が気持ちが悪いからだ!」

「へへ。でも、嬉しいんだもん!」

「その気持ちは勿論分かるが…って、もうこんな時間か!まだ戻ってはこないだろうがそろそろ帰っておくべきだな。行こう、ここちゃん」

「うん!」



これを渡したら、なにかが終わっちゃうのかもしれないけど、
今の私にはよく分からなくて
それでも、











さないように



なにかに繋げたら、










→17.叫ぶ


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