jump comic-D-

□隙あらば好きにスキンシップ
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少しの時間でも
じわじわ、暑くなってくる。

そんな砂浜でやるメンタルトレーニング…という名の潮干狩りも、季節的に限界が近くて
そろそろ釣りだな、なんて皆が話してるのを聞きながら貝をバケツに投げ入れる。



「ヒカル!」

「!」



そこへ「今週は潮干狩りー?」と水着で駆け寄ってくるなまえにあぁ、と返して
思わず脚にいってしまった視線を砂浜に落とす。
毎週見てるのに見慣れなくて困る。

毎週どころか昔から見てるはずなのに、困る。



「部活終わったらオジイのこと寄るから私の分も採ってて?」

「分かった。水泳部は遠泳か?」

「うん、そう!プールも好きだけどやっぱり海のが好きだからテンションあがる〜!」

「そうか」



俺の横にしゃがみ込んで上機嫌なのはいいが、俺は横を向けずにまた困る。

昔と距離感が変わらないのは嬉しい…反面少し複雑だ。
視線が胸元へいかないよう 貝を探すフリをして相槌を打つしかない。



「あ、そうそう!部屋の模様替えしようと思ったんだけどね、いい感じの棚がないの!ヒカル今度作って?」

「あぁ、いいぞ」

「材料は、今度 部活休みの日に買いに行こ!」

「うい」

「あと 昔作ってくれた小さいテーブル、所々色落ちてきててね、」

「あぁ…あれか…。あの色のペンキはあまり余りがありません…プッ…おわッ!」

「お前ら、相変わらず仲がいいこって」

「バネさん、痛いって」
「バネさんってばやきもちー?」

「なんでだよ」



なまえの頼みを聞きながらダジャレを挟んだら、しっかりバネさんのツッコミが飛んできて
ついでに冷やかしも飛んできて

蹴られた勢いで砂浜に転がった俺の頭を撫でながら
ふふ、と笑うなまえも相まって、照れる。

この笑いは俺のダジャレでも、蹴られた俺でもなく
バネさんのツッコミに笑ってるだけだ、多分。と言い聞かせながら視線を彷徨わせる。



「冗談だよー。でもいいでしょ〜お出かけ!バネさんも来る?」

「いや、俺が居ても邪魔になるだけだろーしな」


「うん、バネさんはきっと居づらいと思う!」


「「ん?」」



なまえのその発言に、俺とバネさん二人して どういう意味だ?って顔をする。
そんな俺達を気にも留めず、腕に持ってたパーカーからスマホを取り出したかと思うと なまえはまた俺の隣にぐっと寄ってきた。
水着で腕組むのはよくない。マジで。駄目。



「おい…!」

「見てこれ!期間限定いちごスイーツ食べ放題のお店!見つけたの!行くよね!?チョコレートファウンテンもあるんだって〜!」

「…行く」

「寧ろメインはこっちだったりするんだ〜!」

「いちごスイーツにチョコ、最高のコラボレーション」

「ヒカルは男子だけどこういうの一緒に行ってくれるから好きー!」

「、」

「じゃ泳いでくる!また後で予定立てよーね!」

「…うい」



いちごとチョコ、デラックスではないながらも美味そうなパフェの画像に釣られて 二つ返事で応えた結果が
まさか『好き』で返ってくるとは思わなくて
ドッドッと鳴る心臓が、表情に出てなければいいが…自分ではよく分からない。

とりあえず、何度見ても水着の背中が開きすぎなのが気になる。



「…お前ら…確か付き合ってないんだよな?」

「付き合ってない」

「アイツ、どこまで本気で言ってんだか分かんねーな…」

「俺も知りたい」

「そりゃそうか。ま、デート楽しんでこいよ」

「からかわないでくれ、バネさん」

「カッカッカッ!ダビデにゃ潮干狩りより、なまえと居る方がよっぽどメントレになりそうだな!」

「…案外疲れる」

「満更でもねーくせによく言うぜ。照れっぱなしのダビくんよ!」

「照れてない」



バネさんにはバレバレでも、ついそう言ってそっぽを向けば
笑いながら「そういうことにしといてやるよ!」と叩かれた背中が痛い。


二人とも、少し加減してほしい。





距離感とか。ツッコミとか。










らば好きにスキンシップ



そう思っても結局、小さい頃からのこの距離感が、一番 落ち着く。











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