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□岩ちゃんの幸せのために
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最近すっかり見慣れた彼女の姿を見つけては
今日も声をかける。
岩ちゃんのために。
「あっ!なまえちゃーん!今日も見に来てくれたんだ〜?」
「及川くん…お疲れさま」
「今日も俺のためにありがとね〜!」
「違います」
そう!岩ちゃんのために!!
「も〜、照れなくても゛ッ!!」
「練習中だボゲェッ!ぶん殴るぞ!!」
「ちょ、岩ちゃん痛い…!」
そ、そうだよ岩ちゃん…いい割り込み具合だよ!
でもね、もうちょっと優しく来てくれてもいいんだよ!全ては岩ちゃんのためにやってるんだからね!?
「みょうじもこんなの相手にしなくていいぞ」
「こんなのって!岩ちゃん酷い!」
「うん」
「うんって!なまえちゃんまで酷くない!?」
「だって、及川くんだし」
と、素でそう答えてくれるなまえちゃんは最近
だんだん俺の扱い方が岩ちゃんに似てきた気がする。
良いような、辛いような、複雑な気持ちだよ俺は。
なんて思ってる間に早くも岩ちゃんは俺の襟をひっつかんで、引きずりながらコートへ戻り始めてる。
「おらっ!さっさとしろ」
「え〜!もうちょっといいじゃん〜!」
「その顔やめろ。マジでぶん殴りたくなる」
「……」
「練習、頑張ってね」
「…おう」
「ありがとね〜!」
ホント、岩ちゃんって不器用だよね〜
でもなまえちゃんは岩ちゃんのそういう所が良いんだろうし…
でも岩ちゃん 練習中ボールしか見てないからな〜。
「もー岩ちゃんも素直じゃないんだから〜」
「……」
「岩ちゃん、俺がなまえちゃんと喋ってる時はいつもより連れ戻しにくるの早いよね〜」
「無駄口叩いてねーでさっさと次始めんぞ」
「健気だよねー。いつも練習見に来てるでしょ!」
「…お前を見に来てんだろ」
「えっ!岩ちゃんやっと俺の方がかっこいいって認めて!?あだっ痛いよ!!」
ちょっと岩ちゃん、本当にボール見すぎじゃない?
練習中に一度でもなまえちゃんの方見れば、誰を見に来てるかなんてすぐ分かるのにさ。
すごい真面目な顔してお前を見に来てんだろ、とか!
面白いから 岩ちゃんを見に来てるんじゃん!気づいてないの?岩ちゃんの目は節穴だな〜!とは思ってても言ってあげないけど
なまえちゃんもなまえちゃんで声援とか送るわけじゃなく大人しく見てるだけだし…
俺が話かけないと2人共必要以上に自分からじゃ話さないんだもん。
まぁ、だからこの及川さんがふたりの愛のキューピッドになってあげるしかないじゃん?と思ってるわけで
「うっぜぇ顔してねぇでさっさと始めろ!ボケ及川!!」
「酷い!俺は岩ちゃんのためを思ってるのに!!」
「いらねえ!」
「即答しなくてもいいんだよ!?」
「……」
「無視!?」
もー!人の気も知らないですぐ俺にだけ冷たくするんだからさ…
でも安心して岩ちゃん!それくらいでこんな面白いこと大人しく見守ったりしないから!!全力で手伝うから!!
岩ちゃんの幸せのために
俺が一肌でも二肌でも脱ぐから、大船に乗ったつもりで任せてくれていいからね!!なんて思ってたら後頭部にすごい勢いのボールが飛んできた。
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