Long Story

□気付かぬ想い
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旅立ちを決意した夜、颯妃と三蔵達は町の中華料理店にいた


初めに颯妃と会った店である





「そうか、颯妃ちゃん…行っちゃうのか」



『うん。お母さんが生きてるって分かったから』



「そうだね。颯妃ちゃんいつも言ってたもんなぁ‥‥記憶を取り戻して、両親に会いに行くんだって」



取り戻す記憶はないが、母が生きている事が分かったのだ


そして、もう狼欄の言いなりになる必要もない



「颯妃ちゃんがいなくなるとお店も大変だな
颯妃ちゃんのファンもたくさんいたのに」



『‥‥ゴメンね。
いつも仕事がない時にバイトで雇って貰ってたのに』



颯妃にとって、この店は憩いの場だった



2年前、よく食事をしに行っていたこの店からバイトの話を持ち掛けられた


裏の仕事がない時のみだったが、殺戮や混沌とは無関係の……温かく楽しい雰囲気が大好きだった


何も訊かないで、たまにこぼす颯妃の愚痴を静かに聞いてくれる店の主人が好きだった







『本当にお世話になりました
お母さんに会って、無事を確めたら‥また、戻って来ていい?』



「ああ‥もちろんだ
その時は颯妃ちゃんの大好きな激辛エビチリを用意しとくからな」



『うん!』



満面の笑みで店主に抱き着く颯妃





「お前さん達、颯妃を頼むよ」



その顔は、まるで父親みたいだと悟空は思った



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