短編
□水のない魚
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部屋の電気を落として、壁にもたれかかる。
必要最低限のものしか置いていないこの部屋は酷く殺風景で、生活感がない。
手を持ち上げて軍帽をつかんで、自然にもれる呻き声に俺は重力に逆らうことなく腰を落とした。
血、闇、暗い、光がなくて、頭がいたい。
俺、何で…いきてんの。
耳鳴りがして、いつのまにかそんなことを呟いていた。
気付けば一人で、気付けば血まみれで、
気付けば、大切なきみさえ、。
弾かれたように顔をあげて呆然と闇を眺めた。
「…カママ」
弱いこんな自分、見せるわけにはいかないのに、君がいないと、自分がいる場所や息の仕方さえわからなくなってしまうんだ。
「早く、かえって、そばにきて」
血にまみれて、闇にのまれて、いつか、愛しいきみのことも、忘れてしまいそう。
水のない魚
(いっそきみに溺れて死んでしまえたら)