小ネタ(創作)

□神に願う、最期の一日を
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いきなり現れた少年
見た目は私より幼いのに同い年らしい
白髪で水色の眼
肌は私より綺麗で細くて薄い
そんないきなり、ほんと、転校生の君は
まるで猿が木に抱きつくように
私に抱きついて

「好きだ」

と言った

私は彼のことなんか知らない
いきなりそんな事言われる筋合いがない

けど、彼は本気だった
真顔だった

驚いたけど嬉しかった

――キラワレテナイ

それが読み取れてた私
とても嬉しかった


彼は不思議な少年だった
誰一人、名前を知らないのに
私の名前だけは知っていた
私は彼の事本当に知らないのに
私のことを知っていた

そんな少年の名前は「キセ」



楽しかった、本当に
実は私は学校が大っ嫌いだったから
彼がいてくれたお陰で楽しかった

授業中、何かと私を方を見て話し掛けたり
休み時間は毎回私のトコに来てくれた
昼食は忘れたみたいで
私の持っているパンを平然と奪って食べて
飲み物も飲まれた

けど、嫌じゃない

こんな光景を憧れていたから

だって私は…




私は虐められていたから




友達なんていなかったから




彼、キセのお陰で一日中笑えた




でも、そんなのをよく思わない連中がいて
いつも通り囲まれて
いつも通り殴られ
いつも通り水をかけられた

一体、私は何をして毎日こんな目に合わなきゃならない

いつも思っても声に出さない疑問

だけど彼らの攻撃は止まない
取り敢えず、身体を小さくして防御

私だって馬鹿じゃないんだ
どれだけ殴られてきたかと思っているんだ

でも、そんな空間にいつもと違う者が入ってきた

キセ、だ

彼は叫んで、殴りかかったが
逆に殴られて
踏まれて
水をかけられて

正直、弱かった

けど、怖かった

私を助けに来てくれた人物が
ボコボコにされる姿を見るのが怖かった

だからつっこんだ
彼を助けるために
手を掴んで
二人で走り出した


キセの手は怖いほど冷たかった
キセは怖いほど軽かった


走り出して着いた場所は

のような

のような
木が沢山ある場所

そこで彼の怪我を手当しようとしたが
私は道具を持ってない
ハンカチで傷口を拭く事くらいしか出来ない

それをしようとした時
いきなり抱きつかれた

最初に抱きつかれた時と違う

さっき握った手の温度と違う

恐ろしく冷たい体温だった


怖かった
けど彼は笑って

「好きだ」

と言う
優しく、言う

怖くて恐怖で泣く私に彼は言った

僕はもうじき死ぬ
死ぬ前にどうしても君に逢いたくて
気持ちを伝えたくて
神様に我が儘を言って
人間にして貰ったんだ

意味が分からないよ

そう、だよね
でもね
僕たち、何度か逢ってるんだよ

うそ…

君が知らないだけ
僕は知ってるよ
最後に逢ったのは
日曜日…かな?

日曜日…
動物園に行った日だ

うん
思い出してくれたね

でも、私
一人だったよ

知ってるよ
一人でずっと
僕たちに話しかけてくれた

え…

僕が小さい頃から
君は僕たちに話しかけてくれた
逢うたび笑顔で話しかけてくれた
僕はそんな君に惹かれたんだ
君の事ずっと考えてた
君の事、好きになってた
だから、あいにきた

ちょっと、待ってよ
全然話しが分かんないよ

ごめん
時間がないんだ

彼は私の顔に自分の顔を近付けた
驚いて固まっている私
彼は迷うことなく
私の唇に自分のを押し当てた
その行為を理解する前に
彼は又力強く私を抱きしめた

好き
大好き
許されるなら
もっと君と
きみといっしょにいたかった

風が舞った
目の前に光が出た
いや、彼が光ったのだ
眩しくて反射的に眼を瞑る

自分にかかっていた体重が
驚くほど軽く感じた
むしろ、何も乗っていないようだった

びっくりして眼を開けたら
私の太股に

蒼い鳥

がいた

蒼い鳥が死んでいた

このこ…

声が震える

そうだ、動物園の鳥類コーナーにいた子だ
雛鳥の時から見た子だ
鳥の区別なんて出来ないけど
あのゲージの中にいた数羽の中の子だ

鳥が好きだから
よく話しかけた
動物園に来たら
真っ先にそのコーナーにいって
時間が許す限りいた
絵も描いた
下手、だけど

想い出の数なんて少ないけど
想い出すと溢れてきて
涙がとまらなかった

区別なんて出来ないのに
それなのに
私の事、覚えててくれたんだ

嬉しくて
悲しくて

私は泣いた



ああ神様
もしもいるなら聞いて下さい
彼を幸せにして下さい
私はこのまま虐められても構わないから

こんな私を好きになってくれたキセを
どうかどうか
天国でも幸せにして下さい

それから
もしも後一つ聞いてくれるのならば
キセと一緒にいたいです

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