小説

□婚約者
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「お父様、お話ってなに?」

不二子は可愛いらしく首を傾げた
何の事で呼ばれたかわからないからだ

「おぉ、不二子と京介くんか実は二人に相談があるんだ」

「相談…ですか?」

それに反応したのは京介だ
京介は何だか嫌な予感がししつも聞いた

「不二子は京介くんの事は好きか?」

「えぇ、大好きよ」

おもちゃ的な意味でとは言わなかったがニュアンスで解る
不二子父はその言葉に満足したのか嬉しそうに頷いている

「では、京介くんは不二子のこと好きかね?」

「えっ…」

京介は返答に戸惑った
不二子の事は嫌いじゃない好きな部類に入る方だ
確かに彼女に振り回されてはいるが不二子の事は姉としてしたっている
だが、不二子父の言っている好きとは違う
中々返答しない京介に不二子は何困った顔してんのよ、と耳を抓られた
痛い、痛いと京介は言うしかなかった
そんな二人に不二子父はため息をついた

「いや、実はな不二子の婚約者に京介くんをと考えているんだが」

「えっ?」

その言葉に過剰に反応したのは京介だ
顔を青くし不二子父を見ている
不二子は少し驚いているぐらいで京介みたいな反応はしなかった

「それは、僕の父や母は承諾済みなのでしょうか」

京介は必死になっていった
次の不二子父の言葉によって京介は絶望の道しかないからだ

「いや、先に君達に話しておいた方がよいとおもってな」

だから、相談と言ったろう
と不二子父は笑った
京介はその言葉に安心したが

「不二子は別にいいわよ?」

不二子のその言葉にまた京介は絶望し、逆に喜んだのは不二子父だ

「おぉ、そうか!不二子は賛成か!後は京介くんだが…」

と、京介を見る不二子と不二子父
京介はただ固まっているだけだ
そんな京介に不二子は私の事嫌いなの!?
と言って怒っている

「まぁまぁ、不二子、京介くんに考える時間をあげようじゃないか」

と、その言葉でとりあえずこの話しは終わった
京介は自室に戻りしばらく考えていた
そして、なにか決心したのか京介は部屋を出た
不二子父の部屋の前についた京介
コンコン

ドアをノックする京介

しばらくしてから入れと言う声がした

「失礼します」

「おぉ…京介か、考えてくれたかね」

「はい」

京介は決心したように不二子父を見た
そして…口が動いた


「僕には無理です」


自室に戻った京介は延々と考えていた
もし、婚約者になったら自分はどうなるかを…
不二子にいじられる人生を歩むのは目に見えている
それがずっと続いていると考えたら…
京介は堪えられないと思った
これ以上おもちゃにはなりたくない
答えは出ていたのだ
ただどう断ればいいかを悩んでいたのだ


「すみませんが辞退させていただきます…不二子さんには僕なんかより素敵な人と一緒になった方がいいです」

「そうか……君が1番不二子を幸せに出来ると考えたんだが…」


と、不二子父は残念そうにした
しかし、本当に残念がっているのだろうか?
なんとなく分かっていたような…
京介は恐る恐る浮かんだ疑問を不二子父に聞いてみた

「あの…僕が断ること…分かっていたのですか?」

「ん?あぁ…まぁ、なんとなく予想はしてたよ」

「そうですか…」

「不二子は……母親似でなぁ…」

「そうですね」


外形はともかく似てほしくなかった性格…
とは言わなかったが伝わっているだろう
不二子父は言葉を続けた

「不二子のこの先を考えたらこのままではいかんと考えた、そこで婚約者を作り不二子の未来を考えただが…」

君に断られてしまったな
と、笑う
京介は不二子父の様子を見てこの話しは本気ではないことがわかった
本気ならば京介の両親に話しをつけ政略結婚と言う形に出来るからだ
京介達の意思は関係ないことに出来るのにしない…
冗談だと分かって京介はホッとした
…少しは本気があったのかもしれないが…
京介は『もしかしたら一生不二子さんの奴隷になるかと思った…』と考えていたのでこの結果は助かったと言える
京介は不二子父の部屋を出て自室に戻った

この先、婚約の話しは出ないであろうと京介は安心して眠りについたという…

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