小説

□バレンタインss
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はい、真木ちゃんバレンタインチョコよ」

そう言って市販されているバレンタイン用のチョコを取り出した
真木ちゃんはノートパソコンから目を離し目を

「あぁ、毎年すまないな」

「にしてもモテモテね〜真木ちゃん」

あたしは真木ちゃんが持っている紙袋を見た
中にはいっぱいのチョコやらクッキーが入っていた
パンドラ女性陣からだろう
少佐はこれに子供達も入るから大変だ
バレンタインが始まった本当の理由を知っている少佐はあんまりバレンタインに乗り気ではないが受け取ってくれる
もらった時、少し嬉しそうにも見えるからやはり今年もチョコを渡す
結構甘い物好きなのよね、少佐は


「じゃ、ホワイトデー楽しみにしてるわね」


そう、大半のパンドラ女性陣はお返し目当てだ中にはいつもご苦労様と言う気持ちもあるがやっぱりお返しは重要である
真木ちゃんはけっこういいものをくれる
昔はセンス悪かったけどね

「それじゃ他にも渡しに行くわね」

「あぁ」

真木ちゃんはそう言ってまた視線をノートパソコンに戻す
仕事が山積みのようにあるものね

「あんまり無理したらダメよ〜」

そう言ってあたしはその場を離れた
そういえば…なんでパンドラ内でチョコを渡すのが定番になったのだろう?
少佐は広めたのがあの蕾見不二子だ、と言っていた
ならば、少佐が広めたわけではない
なんでだっけ?と、あたしは昔の記憶を遡って見た
ある記憶にたどり着いた
あれは十数年前……


『今日はバレンタイン特集です』

「ばれんたいん?」

聞いた事ない単語に幼いあたしは首をかしげた
少佐と一緒に暮らし始めて大体半年ぐらいだったかな?
あたしはテレビである番組を見ていた
なんの番組かは完全に忘れたが多分ニュース番組か何かだろう
あたしはバレンタインと言うのに興味を持った
しばらくテレビを見て少佐に聴きに行ったのだ

「京介ーばれんたいんって何?」

少佐は少し驚いたような顔してあたしを見ていた
恐らくバレンタインと言う単語が出て来たからだろう
少佐はしばらく考えてこう言った

「女の子が好きな男の子にチョコを贈る日だよ」

少し考えたのはきっと、幼いあたしにどう説明すればいいか考えてたからだろう
一般的に知られているバレンタインの情報を教えてくれた
その内容に当時のあたしは食いついた

「じゃあ、京介にチョコ渡したい!」

……恥ずかしいがこの時のあたしは少佐に淡い恋心を抱いていた
それは憧れに近いものだったがその時のあたしは少佐に恋していた
好きな男の子に渡す
その文章に心を動かされたのだ
少佐にだめ?と不安げに聞くあたし
少佐は優しい笑みを浮かべ頭を撫でてくれた

「とっても嬉しいよ、ありがとう」

それだけであたしは舞い上がった

「頑張ってチョコ作るね!京介!」

「紅葉一人で出来るのか?」

「失礼ね!司郎ちゃんは黙ってて!あたし一人でチョコ作れるもん!」

実は台所に立つのがこれが初めてなあたし
料理は主に少佐が作ってくれてこの頃、真木ちゃんは少佐のお手伝いをしてある程度料理は出来ていた
幼い子供…料理など何もしらないあたしがチョコ作りなどするなんてこの頃から心配性の真木ちゃんは怪我はしないだろうか考えていたのだろう

「あたしだって出来るもん!」

それから数時間後…
台所はとんでもないものになり、出来たチョコもとても悲惨なものになった
それでも、少佐は優しい笑みを浮かべ渡したチョコを食べてくれた
少し作りすぎてしまいまたまたそこにいた葉とずっと少佐にいじられていた真木ちゃんに残ったものを渡した。
葉は少佐が食べているものに興味があったみたいで嬉しい顔して食べてくれた
この時の葉はかわいらしかった
真木ちゃんは受け取っとって少し苦い顔をしていた。
きっと汚れに汚れまくった台所を見たからだろう
……そう思いたいわ…
その時あたしは来年はもっといいものを少佐にプレゼントしよう!と思っていた
手作りなのはこれが最初で最後だったわ
何故なら…

「本当…真木ちゃんは女心をわかっていないのよね…」

ホワイトデーに少佐は当時欲しかった人形を葉はお菓子についていたカードだった
真木ちゃんは……

「普通手作りのチョコ渡さないわよねぇ…」

そう、真木ちゃんはチョコをくれたのだ
しかも溶かして固めるなんて簡単なものじゃなくて手の込んだものだったのだ
それからだ、あたしがバレンタインチョコが手作りじゃないのは
あれは本当にショックだったのだ
本人は悪気があるわけじゃないのは解る…だけど!
本当最悪なお返しだったわ
あれからかしらパンドラ内でバレンタインが始まったのは
少佐がバベルの特別牢にいても頼めばバレンタインの日に来てくれる
子供には弱いのだ、あの人は
あたしが新しく来た子にバレンタインを教え、それがいつの間にか感謝を伝える日になった

「紅葉、チョコくれ」

後ろから声がした、誰か解る言葉遣い、振り向いて見るとやっぱり葉だった

「何?パティからチョコ貰えなかったの?」

チョコを渡しながら葉に言った
葉はうるせぇよ!と言って乱暴にチョコをとったまったく、好きな子から貰えなかったぐらいでカリカリしちゃって
子供なんだから
くすっと笑うと葉に睨まれた

「たくっ…なんで真木さんなんかに…」

あたしに背を向けた葉がボソッと呟いた
不貞腐れながら歩いて去っていく
あぁ…なるほどね
葉が拗ねる理由がわかった
パティは真木ちゃんにもチョコを渡したのだ
別に深い気持ちはないだろう

「そんなに気にするものかしらねぇ?」

ここが男と女の差なのだろう
好きな女の子にチョコを貰えなかった
男の気持ちなんて解らない

「さてと、他にも配らないとね」

あたしは男性陣がたまっているであろうリビングに向かった。


End

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