物語り


□隠れんぼ
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『ただいま。』


リビングのドアを開け居る筈の香藤に声を掛ける。


『…?…香藤…?』


ジャケットをダイニングのイスに掛けキッチンを覗くがそこに香藤の姿は無い。いつもなら飛び付いて来る筈なのに…。

電気はついてるんだし居るよな…。


『2階か…。』


ジャケットを手に取り2階へと上がる。


『香藤…寝てるのか…?』

寝室を見渡しても香藤は居ない。
岩城の部屋にも…。
ジャケットを放り出し香藤の部屋をノックする。
半ば怒り気味に呼ぶ。


『香藤っ!』


少々乱暴にドアを開けるもやはりそこに香藤の姿は無い。
なんとも言えない不安が足元から岩城を襲う。
それを振り払う様に踵を返し岩城らしからぬ勢いでドタドタと階段を駆け降りていく。


和室の襖を勢い良く両手で開くもやはり姿が無い。
トイレも風呂場にも…。


どうした?
何処に行った…。香藤…。


リビングで一人不安に飲み込まれそうに佇む岩城…。

その背後から小さな声が。


『ぇっと…。おかえりなさい…。岩城さん…。』


振り返るとドアの隙間から顔を覗かせた香藤の姿…。悪戯が見つかった子供の様に上目使いで岩城を見ていた。



『おまっ…!…っ香ぁ〜藤ぉ〜〜〜〜っ!』


『ぅうわぁ〜〜〜っ!!ごめんなさい!ごめんなさい!!(>人<)』


『ったく!ど〜いうつもりだっ!キチンと説明しろっ!!』


眉間にこれでもかっ!という程皺を寄せた岩城がソファに座り腕を組み足元に正座する香藤を睨みつけている。



『う"っ…ιごめんな…さいぃ…ι』


『ごめんじゃ分からんっ!』


『はいぃっ…ιえっ…と…岩城さんが…帰って来たのが…見えたから…チョット…ほんのチョット…驚かそうかなぁ〜…なんて…思って…で、俺の姿が見つかんなかったら岩城さんどんなリアクション取るのかなぁ〜なんて…思って…それで…ιホント!ごめんなさいっ!!(>人<)』
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