この蒼い空の下で 参

□まどろみの好運
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ザァーッと耳を打つ音に、ふっと意識が覚醒する。政宗の帰りを待つうちに、いつの間にかうたた寝してしまっていたらしい。

凭れていた丸窓を少しだけ開ければ強すぎはしないけれど、かといって小雨と呼ぶことも出来ない強さで雨が降っていた。朝から空はどんよりとした雲で覆われていたし、空気も少し湿気を含んでいたから降るだろうとは思っていた。

でも、政宗と小十郎さんは間に合っただろうか。急げば降りだす前には戻れるだろうと言っていたけれど、間に合わなければ濡れて体を冷やしてしまう。

春が近付き、日中はだいぶ暖かくなったけれど、雨が降ればまだまだ寒い。まだ帰っていないなら、着替えとお風呂とお茶のためのお湯も沸かしておかないと。

パチリと火鉢の中で炭の爆ぜる音がした。

何気なく振り向けば、そこには立てた片膝に頬杖を突いてこちらを見ている政宗の姿。バレちまったなと言うように肩を竦めた政宗は、おもむろに立ち上がると私の正面に座り直した。

手を伸ばし、その髪に触れる。根本までさらりと乾いていて、どこも湿ってはいない。

「間に合ったんだ」

「なんとかな」

「良かった」

「本当にな」

そう言って、政宗はどこか楽しそうに笑うと頬に触れてきて、その手の温もりにそっと眼を閉じ頬を擦り寄せる。

「やっぱりまだ寝てるな」

「え?」

「降りだす前にと急いだから少し疲れたと思っただけだ」

違うことを呟いていた気がしたけれど、どこかぼんやりしている意識が向いたのは政宗が口にした『疲れた』という言葉。

「少し、休む?」

「ああ。急いだおかげで時間も空いたからな。少し昼寝する」

お昼寝なら、と寝やすいように崩していた足を正座に座り直そうと浮かせた体が抱き寄せられかと思ったら、そのまま政宗の一緒にごろりと床に寝転がっていた。

「政宗?」

「今日はお前も一緒に昼寝だ」

おやすみと、囁く声は耳に心地好く。さっきまで寝ていたためか、直ぐにとろりと意識が溶け始める。政宗の匂いと温まりに包まれていては尚更で――。


「cuteな寝顔を堪能できただけじゃなく、酒を使わずに甘える美夜が見られるなんてな。急いで良かった。雨様々だな」

楽しげに、微かに体を揺らしながら政宗が笑っていた頃には意識は心地好い夢の中に溶けていた。



 

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