この蒼い空の下で 参

□特別
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「ったく。買い過ぎなんだよ」

「政宗があんなこと言うからじゃん。自業自得ってやつよ」

「事実を言っただけだろ」

「どこが事実よ!」


歩きながら隣を歩く政宗の足を狙って蹴りを入れるけど今度もあっさり避けられた。ちくしょう。


「ところでよ、注文したやつ全部包ませたってことは城に戻るのか?」

「ううん。天気が良いから河原で食べようと思ってるの」

「ふぅん」


あ、また違和感。ほんとにこの違和感は何なんだろ。

城下を出て、街道からも逸れて少し歩くと河原に辿り着く。何度か政宗と来てる場所だからもう案内が無くても迷わずに来られる。

街道沿いじゃないから人目を気にしなくて良いし座るのにちょうど良い草地もある。今日みたいに天気の良い日にはお昼寝したら気持ち良さそう。川の流れも穏やかだから夏になれば川遊びにも最適かも。

草地に座り、二つの包みのうち小さい方を広げて政宗と私の間に置いた。


「そっちがお前のじゃねぇのか?」

「あれは小十郎さん達へのお土産。だいたいあんなにいっぱい食べられないよ」

「太ろうとしてるのかと思ったんだよ。まだまだ小せぇからな」


ニヤニヤ笑いながらぺたっと胸に手の平を置かれた。一瞬で顔に血が上る。


「小さいって言うな! 触るな! この変態セクハラ親父!」


怒鳴りながらベシッと手を叩き落とす。反撃されないうちにと包みごとお団子を持って逃げようとしたけど、足払いを掛けられた。私自身は腕に抱き留められたけど、お団子は全て、まだ一口も食べていないのに草地に落ちてしまった。

あぁ、と落ち込んだのは一瞬。直ぐにお団子のことなど頭から消えた。


「ちょっ! どこ触ってんのよ!」


また着物の上から胸を触られた。地面に激突する前に体を支えたらたまたまそこが胸だった、なんてことは絶対に無い。なにせ足払いをしやがったのは政宗なのだ。


「変態せくはら親父ってのを訂正したらやめてやる」

「い・や! 私は本当のこと言っただにゃぁっ!」


むにゅっと胸を揉まれた。ビクッと体が跳ね一瞬硬直した隙に、今度は太股を撫でられた。このっ! と政宗を睨んで顎に噛み付いてやろうと口を開けた途端、ふわっと体が浮いて背中に微かな衝撃。


「おっと。足が滑って倒れちまった」


爽やかな青い空を背景にしながらニヤニヤと質の悪い笑みを浮かべて私を見下ろす政宗を睨む。逃げたいし何か反撃したいけど、既に手も足も動きを封じられてしまっている。いつにも増して早業だ。そんな特技捨てやがれ!


「今すぐ止めないと小十郎さんに言い付けるからね!」

「なら誰にも言えないようなことをするだけだ」

「は!?」


とんでもない一言に眼を向いた私に向かって勝ち誇った笑みを向けた政宗は、私の顎に指を添え喉を反らせると無防備になったそこをぞろりと舌で舐めた。その瞬間、嫌悪感が全身を支配した。


「嫌ぁっ!」


気持ちの悪さに頭で考えるより先に体が動き、政宗から逃れようと全力で暴れた。力の差は歴然としていて、拘束が緩む気配は無い。それでも舐められた場所を今すぐ洗いたくて、これ以上気持ち悪いことをされたくなくて暴れた。

と、急に拘束が緩み、クリアになった視界を銀の光が一閃した。


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