この蒼い空の下で 参

□Hallowen 2011
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去年は失敗した。だから今年は学習した。同じ失敗は二度繰り返さないんだから!


「政宗! トリックオアトリート!」


スパーン! と勢いよく障子を開けながら言い放つ。恐らく輸入品の、何に使うかよく分からない品を弄っていた政宗が顔を上げ、私を見るとふっと笑った。勝者の笑みの他に若干私を馬鹿にしてるものもあった。

甘いわよ、政宗。今年の私は去年の私とは違うんだから!


「政宗、マカロンちょうだい。マカロンくれないとイタズラするからね!」

「まかろん?」


棚の箱から小さな巾着袋(中身は多分こんぺいとうだ)を取り出していた政宗が動きを止めて振り返った。


「そうよ。私が欲しいのはマカロンだけ。だからマカロン以外のお菓子じゃイタズラ回避は出来ません!」


ふふんと笑いながら胸の前で両腕を交差させバツを作った私を見て、舌打ちをした政宗は顎に手を当て考える仕種。きっとマカロンが何か考えているんだろう。でもいくら政宗でも、外国のお菓子ということ以外は分からないはずだ。

この世界には無いお菓子を指定すれば当然政宗は用意出来ない。それうなれば私の勝ちで、政宗にイタズラし放題! なんて完璧な作戦かしら。ニヤニヤが止まらないわ(卑怯という言葉は受け付けません!)。


「Shit!」


政宗がさっきよりも大きな舌打ちをして、憮然とした顔で座り込んだ。ニマニマ笑いながら政宗の横に座り、顔を覗き込む。


「マカロンは? 無いならイタズラしちゃうよ?」

「・・・好きにしろ」


やったぁー!! 私の勝ちー!!

両腕を上げて喜ぶ私に政宗の眉間の皺は深くなっていく。今はそれを見るのすら楽しくて仕方ない。

ウキウキしながら持っていた包みを開く。中身を見た政宗が「テメッ!」と声を上げ掛けたけど、勝者は私であることを思い出して苦虫を口いっぱいに突っ込まれたみたいな顔をした。

包みの中に入っていたのは黒布で作った猫耳。ちなみに私お手製だ。あとピンクの髪紐も入っている。


「かっわいくしてあげるからね!」


櫛を持ってにっこり笑いながら言ったら本日三度目の舌打ちが返ってきた。

でも気にせず政宗の後ろに周り、まずは髪を梳いた。次にサイドの髪を髪紐を編み込みながら三編みにする。楓さんにモデルになってもらって何度も練習はしておいたけど、髪の長さが違うからちょっと手間取った。

何とか三編みが完成したら正面に移動して出来を見る。うん。まあまあ良い感じだ。可愛いイコールピンク色を選んだから似合っていないけど、似合っていないからこそイタズラの意味がある。


「あとはこれを着けたら終わりだから」

「・・・・・・・」


わざわざ猫耳を見せながら教えても、政宗はチラとも見ない。ああもうほんっと最高の気分! 楽し過ぎる!

ふんふん鼻歌を歌いながら耳を取り付ける。うなじの辺りで紐を結んで止めるから、ちょいちょいと髪を弄って出来るだけ紐を隠した。


「完成ー! 可愛い黒にゃんこ・・・・可愛くなぁい」


ふて腐れたままだから想像していたより可愛くない。結構似合ってるのに。あ、でも拾ってきたばかりで懐いてない猫だと思えば・・・・。


「やっぱ可愛いかも」

「どこがだ」


ぼそりとした呟きが聞こえてまたニマニマ。


「政宗、今日は一日その格好だからね。夜にお風呂入る時になったら外しても良いよ」

「・・覚えてろよ」

「何か言った?」


あまりにも声が小さ過ぎて聞き取れなかった。でも政宗は膝に肘を突き、手の平に乗せた顔をそっぽに向けたままふて腐れてるだけで一言も喋らなかった。


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