この蒼い空の下で 参

□名月
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お風呂から出て部屋に戻って来たら部屋の前に政宗が居た。しかもなぜか側にはお酒とおつまみの乗った御膳。


「どしたの?」

「今日は仲秋の名月だろ」

「ちゅうしゅう?」


聞き慣れない単語に首を傾げる私を見て、政宗があれだと親指を空に向けた。縁の端に寄って見上げた空には真ん丸の月。


「もしかしてお月見のこと?」

「Yes. 分かったらお前も座って楽しめ」


うん、と頷いて御膳を挟んで隣に座り、置いてあった銚子を持ち上げ政宗が差し出してきた盃にお酒を注ぐ。

盃に注いだお酒の波紋が消えると、表面に月が浮かんだ。政宗も気付いたみたいで盃の月を眺めた後に飲み干した。

その姿がかっこよくて、一枚の絵のようで、不覚にも見惚れてしまった。

楽しげに口角を上げた政宗にくいと顎を持ち上げられたことで見惚れていたことに気付かされた。

少しの気まずさと悔しさ、圧倒的な割合を閉める気恥ずかしさに眼を逸らす。それを見た政宗がくつくつと声を出して笑うから悔しさの割合が増えた。


「美夜、お前も飲むか?」

顎を取られたまま親指で下唇をなぞられながら聞かれた。喋りたくても指の存在が気になって喋ることが出来ない。

ふ、と笑った政宗が顔を近付けてきた。口移しされる! そう思って唇をきゅっと強く閉じた。でも、軽く触れただけで政宗は離れていった。


「期待したか?」

「し、してないっ」


楽しげに笑う政宗から眼を逸らす。それだけ? とは思っちゃったけどそれは別に期待とかじゃなくて無理矢理お酒を飲まされると思ってたから拍子抜けしたって言うか・・・。と、とにかく期待なんてこれっぽっちもしてない!


「期待させたんならそれに答えねぇとなぁ?」

「だから期待なんて、あ・・・」


御膳を退かした政宗に腕を取られ膝上に座らされた。離れようにも腰に腕を回され、逸らすことも出来ないように顎を固定されてしまった。


「お、お月見、するんじゃないの?」


恥ずかしさを抑えてなんとかそう言うと、顔を近付けようとしていた政宗の動きが止まった。


「そんなに月が見たいのか?」

「み、見たい」


政宗にキスされるのは嫌じゃない。だけど恥ずかしくないわけじゃないし何より触れるだけで終わることがほとんど無いから積極的にしたいとは思わない。だって、政宗とのキスは甘くて激しくて気持ち良くて、だから何て言うか、困る。


「そんなに見たいならこうすりゃ見れるだろ」

「え・・・あ・・・」


背中に硬い感触がして、見上げた政宗の肩越しに月が見えた。


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