この蒼い空の下で 参

□Birthday
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政宗の部屋に着くと御膳とお酒が既に用意されていた。侍女さんの姿は全く無い。

本当に、二人きり。

その事実をはっきりと感じ取り、一気に落ち着かない気分になった。しかも宴のために綺麗な着物を着てお化粧もしてもらった姿を見た政宗から「最高にCuteだ」と言われたことまで思い出してしまった。

政宗と二人きりになるなんて数え切れないほどあるし、着飾った姿を褒められるのも初めてじゃないのになんで今夜はこんな気分になるんだろう。


「あ、あのね、私からもプレゼントがあるの! 部屋にあるから取ってくるね!」


政宗が何か言う前に小走りにその場から離れた。走りながら胸に手を当てる。

ドキドキしない方法って無いのかな?

部屋に着く頃にはドキドキは治まってくれた。障子を開け、薄暗い室内に眼を凝らす。徐々に眼が慣れ始め、物の位置が分かってきた。

それでも慎重に進んで文机の上に畳んで置いておいたプレゼントを見つけると、それを持って政宗の元に戻った。部屋が近付くとそれだけでまた心臓がドキドキし始める。

部屋に着くと政宗は縁に座って手酌でお酒を飲んでいた。私に気付くと「戻ったか」と微かに笑った。それに頷き、多分顔が赤いだろうことから指摘されないよう政宗の顔を見ないようにしながら側に座った。


「えと、これ。誕生日おめでと」

「Thank」


プレゼントを受け取った政宗は、御膳を脇にやるとプレゼントを広げた。


「着物か」

「う、うん」


政宗は青色が好きだし似合うからと深い青色の反物で作ったのだ。

政宗が一つだけ燈された灯台を近くに引き寄せるのを見て、胸のドキドキに緊張のものがプラスされた。

昔、学校の授業でハーフパンツやエプロンなら作ったことがある。だけどそれはミシンを使って作った。だから全て手縫いで作るのなんて初めて。

着物は基本的には長方形の布を縫い合わせていくだけだけど、手縫いに慣れていないから大変だった。お針子さん達に教えてもらいながら縫ったけど、最初のうちは縫い目はガタガタ。想像以上に全て手縫いというのは大変だった。だから急遽本番の前に端切れで練習をすることになった。

さすがに針を指に刺すことはほとんど無かったけど、本番で縫う場所を間違えて糸を解いたこともある。

おかげで仕上がるのに時間が掛かって間に合わないかもと焦った。お針子さん達が手伝おうかと言ってくれたけど、自力で完成させたかったから断った。

日が無いからと焦り過ぎると縫い目が乱れるから、時間を作るために何日も夜遅くまで頑張った。そのおかげでギリギリ今日の昼前には完成させることが出来た。

安堵した途端に気が抜けて爆睡しちゃったから宴に出る準備までギリギリになっちゃったけど。


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