この蒼い空の下で 参
□羨望
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通り掛かった侍女に梵か美夜ちゃんの居場所を聞くと、二人とも美夜ちゃんの部屋に居ることが分かった。
「・・・っ、・・・・・・!」
部屋が近付くと、美夜ちゃんのものらしき怒鳴り声が聞こえてきた。もしかしてもしかしなくとも調度良い時に来たか?
梵に気付かれないよう気配を消してから素早く美夜ちゃんの部屋の隣の部屋に入り、襖を指一本分だけ開けて隣室を覗いた。
梵の膝上に居る美夜ちゃんの着物の裾が大きく開け、膝が見えている。梵の手は膝より上、太股の位置にあった。
覗き見してるのがバレたらヤベェことになるだろうけど気になるんだから仕方ない。好奇心も多少はあるけど。
「いつまで触ってんのよこの変態!」
「誰が変態だ!」
美夜ちゃんは梵のせくはらとかいう行為から逃れようと暴れているけど、腹に回された梵の腕に邪魔されている。それでも暴れるから裾の乱れはどんどん酷くなって、美夜ちゃんの太股の内側を触っている梵の手がチラチラと覗く。
あんなとこ触ってたら俺だったら絶対にムラッときて押し倒しちゃうけどなぁ。
「ひぎゃあっ! ちょっ、どっ、いいい今どこ触ってっ!」
真っ赤になって涙目で硬直した美夜ちゃんに、まさか梵の奴性器に触れたのかと目的も忘れて色めき立つ。
「足の付け根を触っただけだろ。一々騒ぐな」
なんだよー、付け根かよー。俺の期待返せよなー。
「騒ぐに決まってるでしょ! このドスケベ! 変態! エロジジイ! そんなに触りたいなら自分の触れ!」
「触る許可出すなんざ珍しいじゃねぇか」
「はぁ!? あんた耳遠くなったの? 私は自分のを触れって言ったのよ!?」
「だからだろ。美夜は俺のものじゃねぇか」
さも当たり前のことのように言い放った梵に、美夜ちゃんの顔が怒りとは別の朱に染まっていく。顔だけじゃなく耳や首まで赤い。
「わ、私は私のだって何度も言ってるじゃない」
返す美夜ちゃんの声は言葉ほど勢いが無い。それに美夜ちゃんの言葉から梵にそう言われるのはこれが初めてではないと分かる。
美夜ちゃんを見る梵の目が、それまでの悪戯を楽しむものから甘さを多分に含んだ優しいものに変わった。
「それは昔のことだろ。今は俺のものだ」
そう言って美夜の頭に顔を近付けた。美夜ちゃんの体がピクリと反応する。多分後頭部に口づけされたんだろう。美夜ちゃんはゔー、と唸りながら体を小さく縮こまらせる。
その時、胸元に引き寄せるように動いた美夜ちゃんの足に目がいった。
梵がよく美夜ちゃんの体はどこもかしこも細くて心配だと言っているけど、確かに肉付きの薄い細い足だ。でも、過ぎるほどに細くはない。
夏から寒くなるまでの間、美夜ちゃんは露出の多い衣服を着ていたから太股を見たことは数え切れないほどある。
だけど今の美夜ちゃんの太股は真っ白な肌がほんのりと桃色に染まっていて正直色っぽい。火鉢のある部屋で暴れたことや梵の言動で体が火照っているんだろう。
原因は簡単に想像出来た。それに俺は美夜ちゃんのことをそういう対象として見たことが無い。なのに・・・。
「ヤベェ」
俺の中の男の部分が反応しそうになって直ぐに視線を逸らした。思わず零れた呟きにハッとなって口を押さえ、バレてないよなと梵を見た。梵は俺と同じように美夜ちゃんの足を見ていて、その目には明らかに情欲の炎が宿っていた。
美夜ちゃんのことを一人の女として見たことの無い俺ですらヤバかった。美夜ちゃんに惚れている梵なら尚更のはずだ。
美夜ちゃんが梵の変化に気付いた様子は無い。赤くなったまま身を縮めているだけで、足を隠す素振りを見せない。際どい所まで曝されていることにまで気が回らないのかもしれない。
梵の手が美夜ちゃんの足に伸びた。まさか・・・。
知らず、ゴクリと唾を飲み込んだ。
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