この蒼い空の下で 参

□春
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春ってなんでちゃんと寝てても眠たくなるんだろ。やっぱり陽射しがポカポカしてて気持ち良いからかな?

ふぅわ、と欠伸をしながらぶらぶらと適当に歩く。こんなに天気が良いのに部屋にいるのは勿体なく感じたからだ。

でも、歩いていても特に面白そうなことも興味を引かれるようなことも何も起きないし見つからない。部屋に戻って昼寝でもしちゃおっかな。

また出た欠伸を噛み殺しながら、政宗はどうなんだろと気になった。やっぱり政宗も春の陽気に眠気を誘われたりするのかな?

探したら政宗は執務室に居た。風を入れるためか天気が良いからか、半分だけ障子を開けたままにして、腕を組んだ姿勢で壁に凭れてる。

顔を俯けているから寝ているようにも見えるけど、ただ凭れているだけにも見える。ここからじゃどっちか分からない。


「政宗?」

「・・・・・・・」


部屋の外から小声で呼び掛けてみたけど反応無し。少し待ってみてからもう一度呼んでみたけどやっぱり反応は無かった。

そぉっと近付いて、側に膝を突いて顔を除き込む。目を閉じているし、規則正しい呼吸は寝息にも聞こえる。だけど、こーゆー場合狸寝入りされてて何かしようとした途端に起きて逆にこっちが何かされる、っていうお決まりの展開があるから用心が必要だ。


「政宗?」


本当に寝ている場合を考えて囁き程度の声でまた呼んでみる。反応無し。つんつん、と軽く頬をつついてみたけどこっちも反応無し。どうやら本当に寝てるらしい。

だったら大丈夫、かな。起きてる時にこんなに近付いたらセクハラされるけど、寝てるなら安全だ。起きる前に離れないとセクハラされるかもだけど。


「寒くないかな?」


陽射しは暖かくなってきたけど、風はまだ少し冷たい。それに政宗が寝ている所まで陽射しは届いていない。

部屋の中を見回したけど執務室だから掛けられそうなものは見当たらなかったから自分の部屋に戻って上着を持ってきた。

掛けようとして、組んだ腕が気になった。せっかくお昼寝するならもっと楽な体勢で寝れば良いのに。


「解けないかな」


起こしてしまわないように注意しながら腕を解けないか試してみる。あ、解けそう。そう思った時、いきなり手首を掴まれた。


「ご、ごめん。起こすつもりじゃなひゃぁ!」


今度は抱きしめられた。政宗が起きたらセクハラされないうちに逃げなきゃって思ってたのに! 私の馬鹿ー!


「ぅにゃっ」


逃げるためにもがいたらさらに強い力で抱きしめられた。しかも首筋に顔を埋めてきたから政宗の息が当たってくすぐったいし恥ずかしい。

思わずギュッと目も閉じて身構える。けど、いつまで経っても政宗はそれ以上のことをしてこない。規則正しい息だけが首筋に当たる。

もしかして、寝てる? さっきのは寝ぼけてただけ? それでこんな体勢!? 政宗ってば寝相悪過ぎるよ! てか心臓に悪い!

ずっと息が当たってるからドキドキし過ぎて心臓が壊れちゃいそう。恥ずかし過ぎることもあって離れたいけど、これだけ強く抱きしめられてたら離れるには政宗を起こすことになっちゃうと思う。

せっかく気持ち良さそうに寝てるのに起こすなんて気が引ける。となればもう政宗が自然と起きてくれるのを待つしか無いんだけど、それっていつになるの? 私の心臓が壊れちゃう前に起きてくれるよね?


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