この蒼い空の下で 参
□冬
1ページ/3ページ
先の尖った枝と木のスプーンを道具に雪山の表面をガリガリと削っていく。雪山は毎日の城内の雪掻きで出来たものの一つだ。邪魔にならないよう城内の端っこに集められてるから私のしてることは今のところ誰にも見付かってない。
日当たりが悪くてかなり寒いけど、作業をしているうちに体が温まってくる。というかうっすらと汗ばんできた。金属のヘラとかあったらもっと楽だったんだけど仕方ない。
「出来たー!」
地道に枝やスプーンで作業を続けること多分四・五時間くらい。漸く完成した。雪山の表面にはニヤリと笑う肩から上の政宗の姿。美術は得意じゃないけど苦手でも無いから、完成した彫刻も上手くもなければ下手でもない感じだと思う。
とりあえず誰が見ても政宗だって分かる出来栄えのはずだ。てか枝とスプーンだけでこの出来栄えなら良い方だと思う。眼帯で誰か分かるって指摘は受け付けません!
雪の彫刻が終わったら次は雪玉作り。手袋なんてないから手に息を吹き掛けながら作るけど、すぐに指先が真っ赤になって感覚が無くなってきた。今日はここまでにしよう。部屋に戻って火鉢で冷えた指先と体を温める。明日には用意が整うはず。楽しみ過ぎてニヤニヤしちゃう。部屋に一人で良かったよ。ぐふふ。
翌日、政宗のセクハラからの逃亡に失敗して残りの準備が出来なかった。仕方なくさらにその次の日にやった。政宗は鍛練中なのをしっかり確認済みだ!
夜に降った雪で彫刻は埋まってしまっていたけど、降ったばかりの雪は柔らかくて払うだけで簡単に落ちた。二日前に作った雪玉も埋まっていたのを発掘し、さらに幾つか作る。合計二十個くらい出来た。これで準備はオッケー!
雪玉を持って雪山に彫った政宗の彫刻から二・三メートルほど離れる。そして雪玉を持った右手を思いっきり振りかぶり、
「政宗の馬鹿ー!!」
ぶんっ! と投げた雪玉が彫刻の政宗の肩辺りに当たった。チッ! 狙いがちょっと外れた。新たな雪玉を持ってまた振りかぶり、投げる。
「政宗のへんたーい!!」
今度は額辺りに当たった。イェイ! やっぱり顔に当てないとね! 本人にやれたら一番なんだけど絶対に避けられるだろうし後が怖いのよね。だからわざわざこっそり彫刻を彫ったってわけ。まあこれもバレたらヤバいんだけど。
だから時々周囲に人が居ないことを確認するのは忘れない。せっかく考えた最高のストレス発散方法と政宗への(擬似)仕返しを失いたくないからね。
「政宗のエロオヤジー!!」
顔のど真ん中に当たった。やったー!! ナイスコントロール私!
.