この蒼い空の下で 参

□正月
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「ふぇ、ぷしっ」


今度はさっきよりもたくさんの雪を突っ込んでやろうと思ったのにくしゃみが出た。鼻水まで垂れてきそうになった。

背中に入れられた雪はとうに解けて水になっちゃってるし、二度も頭から雪に突っ込んで体中雪まみれになったから体が冷えちゃったみたい。

政宗への仕返しは一旦中止して、一度部屋に戻って着替えよう。と思った時には政宗に抱え上げられていた。小荷物のように脇に。


「もーちょっと女の子らしい扱いしてほしいんだけど」

「したらしたで叫ぶだろうが」

「叫ぶわけな、わぁー!!」


ひょいっとお姫様抱っこに変えられた瞬間に政宗の言った通り叫んでしまった。なにこれものっすごい恥ずかしいんだけど! 政宗の顔が近いんだけど!!


「あ、歩く! 自分で歩くから降ろして!」

「もう着くからじっとしてろ」

「ひにゃ!」


なぜか額にキスされて、しかも変な声が出た。唇が触れた部分だけが異様に熱い。大人しくするつもりなんて無かったけど自然とそうなってしまってた。

政宗の顔が見られなくなったまま部屋に連れて来られて降ろされた。部屋の中は火鉢のおかげで温かい。楓さんが着替えを持ってきてくれて、濡れた着物を脱いでいく。


「楓さん、政宗って何かの病気?」

「いえ。そのような話は聞いておりませんが、何か気になることでも?」

「こっちに戻って来てからなんかオカシイんです。私の心臓がパーンてなりそうなことばっかりしてくるんだもん」


新しい着物を持ったままさっきキスされたとこを押さえる。まだ熱い。思い出しただけで口から心臓が飛び出しそうなくらいドキドキしてしまう。


「きっと政宗の頭がオカシクなったんだと思、ぎゃあっ!」

「さっきから聞いてりゃ、crazyなのは俺じゃなくてテメェだろうが!」

「痛い痛い痛い! 頭割れる!!」


こめかみを引き攣らせながら頭を掴んでくるからほんとに割られそうな気になっちゃう。あまりの痛みに涙目になったら、気付いた政宗が目尻にキスしやがった。


「ぎゃー! 何すんのよ馬鹿ー!」

「ぐっ」


久しぶりに私の攻撃が政宗にヒットした。でもさすが政宗と言おうか、目を閉じるだけで痛みを堪えてる。これが成実さんだったら絶対に股間を抑えて蹲ってるよ。だけど、政宗がされっ放しでいるはずもなく。


「美夜」

「な、なに」

「今の自分の格好忘れてるだろ」

「え? きゃあぁぁぁっ!」


パッと両手で胸を隠す。馬鹿だ。私馬鹿だ! 馬鹿過ぎる! 政宗には何度も見られてるし、それこそ胸だけじゃなく全裸だって見られてる。だからって恥ずかしい気持ちが無くなるわけないし、何よりこの状況で裸でいるなんて致命的過ぎる!


「着替える時になんで出てかなかったのよ!」

「俺が出てく前に脱ぎだしたのはそっちだろ。それだけ見せたいんだと思って見ててやったんじゃねぇか」

「そんなわけないでしょ! 私はとっくに政宗は外に行ったと思ってたのよ!」


ギャイギャイ言い合いながらも私は後ろに、政宗は前にと進む。すぐに背中が壁にぶつかった。たら、と冷や汗が流れる。

政宗が壁に手を突き、腕の中に閉じ込められた。だけどこんな状況に陥るのは初めてじゃない。

素早くしゃがんで腕の下を潜って逃げ、ようとしたけど腰をさらわれてあっさり失敗。私が政宗から逃げられる日って来るのかな・・・。


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