この蒼い空の下で 参
□夏
1ページ/7ページ
【07 〜 08 辺りの話】
「美夜ちゃーん、今夜暇ー?」
「暇と言えば暇だけど、いきなり何?」
「今夜面白いことやるからそのお誘いだよ。集合する部屋は・・・時間になったら迎えに来るよ」
「・・・どうもありがとう」
とうとう成実さんにまで私が城内で迷うことが知られちゃったのか・・・。早く覚えなきゃなー。覚えようとはしてるんだけどなかなかねー。
「ところで面白いことって何?」
「本番までのお楽しみ!」
語尾に星マークが付きそうな若干ウザいテンションの成実さんに暑さも手伝ってイラッときた。成実さんも何かを察したのかじゃあねと言ってそそくさと去っていった。
あーあ、八つ当たり対象だったのに。にしても面白いことってなんだろ?
――――
成実さんが迎えに来たのは陽が暮れ始めた頃。今夜は夕餉がいつもより少し早かったのはこのせいなのかも。
成実さんに着いて行くと広い部屋には既に政宗の姿。どうやら『面白いこと』には政宗も参加するみたい。
ただ気になるのは政宗が部屋の真ん中に座っててその周りを火の点いていない蝋燭が何本も置かれてること。十個近くある。
「美夜ちゃんはそこに座って」
示されたのは政宗の向かい。どうやら三人で三角形の形に座るみたい。
「ねぇ、これから何するの?」
「An? 成実から聞いてねぇのか?」
「うん。面白いことするって聞いただけ」
「面白いことぉ? くだらねぇことの間違いだろ」
「くだらなくないって、夏って言ったらこれだろ?」
成実さんが持ち上げたのは一つだけ火が点いてた蝋燭。それを傾けて他の蝋燭も点していく。
夏の定番で、蝋燭をたくさん使う・・・・。
「まさか百物語!?」
「当ったり〜。まあ三人だけだし蝋燭を百本も用意するのはめんどくさいから一人四話づつで十二本用意しただけだけどね」
「わ、私用事あるからパス!」
「怖いのか」
「美夜ちゃん怖いの?」
二人してニヤニヤと似たような笑みを浮かべて見てくる。怖いと認めるのは凄い癪に触る。それに認めたら絶対にからかわれる!
「こ、怖くないよ! ただ、その、えーと・・・そ、そう! 話が無いの! 私あんまりそーゆー話のレパートリーが無いのよ!」
「じゃあ俺と梵が話すから美夜ちゃんは聞いてるだけでいいよ。梵もそれでいいよな?」
「ああ」
あう、逃げるの失敗した・・・。こうなったら早く終わるのを祈るしかない!
.