この蒼い空の下で 弐

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「何をどうしたらこんなになるんだろ」


邪魔にならないように端の方から兵士さん達の手で埋められていく抉れた地面や道場があった場所を見る。政宗と幸村の仕合によって出来た破損は建物だけでなく塀や木々、地面にもあった。幸村とお館様の殴り合いもいろんな意味で凄かったけど、婆裟羅者同士の戦いも凄すぎる。ちっちゃなクレーターみたいな抉れ方だし道場なんて土台まで壊れてるもん。


「難しい顔して何を見てるんだい?」


突然の声に横を見たらいつのまにか慶次が居た。もちろん夢吉も。手を伸ばすと慶次の懐から私の手を伝って肩へと移動してきた。いつ見ても可愛い。癒されるよ。


「ね、慶次も属性の力を使えるんだよね? なら慶次が誰かと仕合してもこうなっちゃう?」


こう、と抉れた地面を指差したら案の定慶次はなるよと頷いた。


「だから片倉さんに独眼竜と仕合したいなら城外の周りに何も無い場所まで行けって釘刺されちゃったよ」

「それは仕方ないよ。ここでさらに慶次との仕合までやったら本丸まで倒壊しちゃいそうだもん」


一部は瓦だけでなくその下の部分の修理も必要になっている本丸の屋根を見上げる。隣で慶次も同じように見上げて、さすがにこれを壊したら大変なことになるもんなと言った。でも私からしたらちっちゃなクレーターかってくらい地面を抉れさせちゃっても大変なことだと思う。婆裟羅者の人達からしたらきっとこれくらいは日常茶飯事なんだろうけど。


「美夜は本当に人気あるよな」

「え?」

「ほら、あれ」


慶次の指差した先を見ればチラチラとこっちを見ている大工さん達の姿。人気があると言うよりも、侍女のお仕着せを着ていなくてさらには何か仕事をしている様子も無い私が気になってるだけな気もする。噂と天姫なのかと疑われてそう。

私が噂の当人だとバレたら絶対にガッカリされるだろうから、バレない内にと寒くなったから戻ろと慶次を促した。噂はどうにかしたいけど、目の前で大勢にガッカリされたくないし、ガッカリしてる姿も見たくないもん。


「そう言えば慶次はいつまで居るの? 前来た時は連れ戻されって聞いたけど、逃げて来たの?」

「逃げてきたわけじゃないよ。ただ俺があちこち旅することをまつねえちゃんも利も許してくれないんだ。だからいつもこっそり出てくるんだけど直ぐにバレて二人で追い掛けて来くるんだよ」


それで毎回捕まらないように逃げているけど毎回逃げ切れるとは限らないらしい。慶次って家出癖でもあるのかな。


「二人は慶次のことが大切なんだよ。だからずっと家に居てほしいんじゃないかな」

「俺もそう思うよ。でもやっぱり一つの場所にじっとしてるのは性に合わなくってさ。風みたいに自由にいろんなとこに行きたいって思うんだよ」

「そうなんだ」


慶次らしいなぁって思った。気の向くまま風の吹くまま、何にも捕らわれず自由に気ままに心が感じるままに行動する方が確かに慶次には合ってる気がする。政宗みたいに部屋の中で執務をしている姿よりも、景色を楽しみながらぶらぶらと歩いている姿の方がしっくりくる。


「でもまつねえちゃんにはふらふら遊び歩いてるだけだって怒れちゃったんだよなぁ。ちょっと祭りを楽しんでただけなのにさ」


不満げな慶次を見ながら、慶次は属性そのままの気質なんだなぁって思った。もしかしたら属性って言うのはその人の気質が大きく関係してたりするのかも。特に幸村とかそんな感じだ。いつでも熱血! って燃えてる感じだし。

政宗の雷も、かな。雷って激しくて強くて時には怖いけど、写真で見ると綺麗だったりする。政宗もそんな感じ。自信に満ち溢れた表情をしている時の政宗の眼はまさに雷のように激しく強い光があって、でも綺麗なのだ。思わず見惚れてしまうほどに。引き付けられてしまうほどに。

政宗は一瞬の光でも十二分に人を魅了してしまう力を持ってる。


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