この蒼い空の下で 弐

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休憩中だったことを思い出したのはそれから大分経った頃。政宗も漸く離してくれて勉強を再開することになったけど体にはまだ政宗に抱き締められていた時の感覚が強く残っているし匂いまで移ってしまっているように感じて勉強に全く身が入らなかった。政宗も直ぐにそれに気付いたみたいで、今日はここまでということになった。


「明日からは何にもしないでよ?」

「studyの間はしねぇよ」

「その言い方だと終わった後に何かするって言ってるように聞こえるんだけど」

「よく分かったな」

「分かるわよ! 政宗のことなんだもん!」

「っはぁ・・・。そういうことを言うから色々したくなるっていい加減気付け」


疲れたようなため息を吐かれたと思ったら頬にキスされた。政宗のこういうとこはさっぱり分かんない! そういうことってどういうことよ。私別に変なこと言ってないじゃない。

丸めて筒状にした地図を持ちながら(復習したいから借りていいか聞いたらくれた。)部屋に戻る間も考えてみたけどやっぱり分からない。政宗の思考回路が特殊なのかそれとも男はみんなそうなんだろうか。誰かに聞いてみようかな。でも誰に聞こう。こういうことは佐助には聞きたくない。からかわれて遊ばれそうだもん。幸村は純粋だから分からないだろうし、小十郎さんはそういうイメージが無い。成実さんはなんか頼りになりそうなイメージが無い。となると綱元さんか慶次か。


「わっ!」

「っと、すまぬ」


考え事をしながら歩いていたから角を曲がってきた幸村に気付かずぶつかりそうになってしまった。


「ごめん。ちょっと考え事してたから」

「いや、俺の方こそすまぬ。しかしちょうど良かった」

「え?」

「今政宗殿を訪ねようとしていた所なのだが、美夜にも伝えようと思っていたのだ」

「私にも? 何を・・・あ、政宗にも話すんだっけ? なら私も政宗のとこに行くからそこで聞かせてくれる?」

「良いのか? どこかへ行く所だったのでは・・」

「これを部屋に置きに行こうと思ってただけだから気にしないで。それにさっきまで政宗のとこに居たし」


持っていた地図を見た後政宗の部屋の方を見た。それから幸村に視線を戻したら幸村は面白くなさそうな顔をしていて、その顔のまま私に聞いてきた。


「政宗殿と二人でおったのか?」

「そうだけど・・・。この世界のことを教わってたの」

「この世界のことを?」

「私の居た世界、というか時代とここは違うから違うことが色々あるの。だからそれを教えてもらうことにしたの」

「なぜ、と聞いても良いだろうか」

「良いよ。って言っても凄い理由があるわけじゃなくて、この世界のことを何にも知らない自分を情けなく思ったの。それに政宗が居るこの世界がどんな場所なのか知りたいって思ったから・・」

「政宗殿だけなのか?」

「え?」

「この世界には俺も居る」


思い詰めた顔の幸村にグッと強い力で両腕を掴まれた。女の子の体に触れただけで破廉恥と叫び出す幸村らしくない行動だ。私を見る幸村の眼も、必死さと懇願とが混じっているように感じる。これも幸村らしくない。


「美夜の眼には政宗殿しか映っておらぬのか?」

「幸村、痛い」

「あっ、す、すまぬ!


次第に腕に食い込んできた手の傷みを訴えると幸村は慌てて私の腕から手を離した。謝ってくれる幸村は本当に申し訳なさそうで、腕を擦りたかったけれど幸村の前では我慢して大丈夫と笑った。


「本当にすまぬ」

「大丈夫だから謝らなくていいよ。それより、さっきはどうしたの?」

「あ・・・先程のことは忘れてくれ。すまぬ」
「あ」


頭を下げた幸村はそのまま私を見ないようにして足早に去って行った。明らかに様子が変だったし私にも話があると言っていたことを思い出して追い掛けようとしたけど、一歩踏み出した体が何かにぶつかった。感触は布なのにその奥に色々と何かがあるのか硬くてぶつかった場所が痛い。


「いったぁー」

「ごめんねー。俺様イロイロ持ってるからさー」


ぶつかったのがヘラヘラと笑う佐助の胸だったと分かって苛々度が増した。わざと私の前に立ったに決まってる。私の行く手を遮るように現れたし。


「幸村呼ぶよ」

「れは困るかなぁ。美夜ちゃんと二人で話したいことあるし。旦那のことで」


最後の一言で幸村を呼ぶのを止めた。それくらいさっきの幸村は変だったから。


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