この蒼い空の下で 弐
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歩くうちに鍛練場に辿り着いて、せっかくだからと手合わせが始まった。と言っても兵士さん達が順番に幸村か慶次に向かっていくって感じなんだけど。終わるまで夢吉を預かっててほしいと渡されたから、夢吉を肩に乗せて離れた所からそれを見ているんだけど・・・。
「うわぁ・・・」
慶次が背中に負っていた慶次の身長より長いデカイ刀、飾りか何かかと思ってたら違ったみたい。鞘に嵌めたままだけど、軽々と扱ってる姿から使い慣れたものだと分かる。あの腕の筋肉にも納得だ。
「あんな大きなのを軽々と扱うなんて慶次って凄いんだね」
「ウキッ!」
自慢げに胸を逸らした夢吉にキュンキュンした。ほんっと可愛い!
「・・ちゃん、美夜ちゃん!」
「ん?」
呼ばれた気がして周りを見たら、建物の影から成実さんが手招きしてた。草履を脱いで上がり、側まで行くと手近な部屋に押し込まれ、なぜか入念に周囲の人影を確認してから成実さんは中に入ってくる。
「いきなりなに? なんでコソコソしてるの?」
「梵が居ないか確認してたんだよ」
「政宗に聞かれちゃいけない話でもするの?」
「うんまあちょっとね」
そう言って、嫌に真剣な表情になって顔を寄せてきた成実さんに釣られて私まで緊張してきた。
「正直に答えてほしいんだけどさ、」
「うん」
頷きながらごくりと唾を飲み込む。
「美夜ちゃん、幸村のことどう思ってる?」
「・・・・・・は?」
「だから、幸村のことをどう思ってるのかってこと」
え、なに? 真剣な話かと思ったら幸村をどう思ってるかだって? それってそんな真剣に聞くこと? 。成実さん相手に真面目に聞こうと思った私が馬鹿だったわ。
「どうも何も幸村のことは友達だと思ってるけど」
「それだけ?」
「他に何があるのよ」
「本当に?」
「ほんとに」
「誓える?」
「しつこいなぁ。だいたいなんでそんな変なこと聞いてくんのよ」
「さっき兵等がこそこそ話してたんだよ。美夜ちゃんと幸村が良い感じの雰囲気作ってたって」
「はぁ? 何それ」
良い感じの雰囲気ってなに。そもそもそんな訳分かんない空気なんて幸村と作ったこと無いんだけど。もしかしてあれか? 幸村がこの城の男の人の中には居なさそうな超が付くピュアな人だから珍照れたりしてる姿見て変な勘違いした、とか?
「その様子だと本当に友人としか思ってないみたいだね。あー良かった。梵にバレて八つ当たりされたり万が一のことがあったらどうしようかと本気で焦ったぜー」
出てない額の汗を拭いながら成実さんは晴々とした顔で出て行った。かと思ったら戻ってきて、
「一応言っとくけど美夜ちゃんは梵のものだからな?」
と、なんであんたにまでそんなこと言われなきゃならないんだとか私は私のものだっての! とか色々不満が出来た。でもそれよりも気になることがあった。
「いきなり何であんなこと言い出したんだろ?」
「ウキィ?」
夢吉と一緒に首を傾げた。その姿にもキュンキュンきた。
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