この蒼い空の下で 弐

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部屋に戻って外套を羽織ってから門に行くと、政宗と話す幸村の側に髪を染めて服も変えた佐助が居た。

分かってたことだけどやっぱり佐助も一緒みたい。政宗が居るから大丈夫と思えば良いのか、ドSが二人と警戒した方が良いのか・・・。いざとなったら幸村に頼ろう。少なくとも佐助相手なら頼りになる。


「お待たせー」

「来たか」


どうやら政宗の機嫌は直ったみたいでもう不機嫌そうな様子は感じられなかった。私が側に行くとみんなを促して城下に向かった。

政宗がいるおかげか、佐助は幸村のお付きっぽく静かなままで、終始和やかにお団子屋さんに到着した。でも中の席はほとんど埋まってて、四人纏めて座れるのは外の席しかなかった。


「どうする? 私は外でも良いけど・・・」

「俺も外でも構わぬ」

「俺はどっちでも良いよー」

「政宗は?」

「外で構わねぇよ」


一応意見が揃ったから、外の赤い布が敷かれた席に座った。外の席は中と違って椅子が机の機能も兼ねているし、一緒に来たのに背中合わせなのも変だから向かい合うように二つの椅子に別れて座った。私と政宗、幸村と佐助に別れ、私の向かいが幸村で政宗の向かいに佐助だ。

座ってから程なくして、お盆に四人分のお茶を乗せて店員のおばちゃんが来た。


「いらっしゃい。何にします?」

「何か温かいもんはあるか?」

「善哉がありますよ」

「ならそれと団子を一つつづ」


自分のと多分私の分を注文し終えると、政宗は幸村へと視線を向けて促した。甲斐から奥州までの短い旅の間に幸村が甘党でかなり食べるのを知ったから、本人に注文させた方が良いのを知っているのだ。山盛りのお団子を食べる幸村を初めて見た時の引き攣ってる政宗はちょっと見物だった。

十六人前(一人前は佐助の分だろう)注文した幸村がおばちゃんが何度か確認されたりしたけど、注文して少し経つと楽しみにしていたお団子が運ばれてきた。


「お前はこっちだ」

「え・・・」


お団子ではなく善哉の方を政宗に渡された。不思議に思いながら受け取ると、お椀を持った手の平がじんわりと温まっていく。

ふと政宗を見た。適当に座った気で居たのに、政宗は風上に座っていた。おかげで私にはほとんど冷たい風が当たらない。ほかほかと湯気を立てる温かい善哉を頼んでくれたのも、きっと同じ理由。


「あ、あり、がと」


さりげなくい優しさが嬉しいと同時に照れくさくてぼそぼそとした声になってしまった。でも、ふ、と政宗が柔らかく笑ったからちゃんと聞こえていたと思う。まだ一口も食べていないのにもう頬が熱い。


「なんだ?」

「旦那?」

「いや、何でもない。恐らく気のせいだ」


困惑げに胸元を抑えた幸村を見た政宗の眼が一瞬だけ鋭くなった気がした。


「冷めるぞ」

「あ、うん」


箸を渡してくれた政宗は普段の政宗で、一瞬だったしそもそも政宗が幸村をあんな眼で見る理由が思い当たらないから気のせいだったのかもしれない。


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