この蒼い空の下で 弐
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楓さんは再び前のように私の侍女として側に居ると言ってくれた。それに恐る恐る友達になってくれるのか聞いたら「よろしくお願いします」って緊張してるみたいだったけど笑みを浮かべながら言ってくれた。
その楓さんは室内には居ない。まだ政宗に戻ってきた挨拶をしていないからと政宗の所に行ったのだ。ついでにかすがのことも伝えてくるって。
どうやら楓さんの独断でかすがを城内に招いたらしい。伊達と上杉は同盟関係に無いからそんなことしたら大問題なのに、かすがは私の友人として会いに来たと聞いてつい招き入れちゃったんだって。
「楓とか言ったあの女、一人で行かせて大丈夫なのか? あの女に着いて入って来てしまった私が言うのもおかしいが」
「大丈夫だよ。政宗は優しいもん。なに?」
ジッと見つめられて首を傾げたら、かすがは訝しげに眉を潜めた。
「伊達政宗という男は本当に優しいのか? さっきあの女はお前は隠れ鬼をしているだけだと言っていたが、本当にそうなのか?」
隠れ鬼って、かくれんぼのことだよね? まあ政宗から逃げて隠れてたから確かにそう言えなくもないけど・・・。
「もしお前が伊達政宗に虐げられているなら私と来い。謙信様ならお前を快く受け入れてくださる」
「ありがと。でも大丈夫だよ。あれはかくれんぼみたいなものだし、政宗も意地悪な時は多いけど優しい時もあるから。昨日も誕生日のお祝いにってこれくれたんだよ」
ブレスレットを見せたらかすがも漸く私は政宗に酷い扱いはされていないと納得してくれた。
「どうやら噂の方が正しかったようだな」
「え、噂?」
現実の私とはあまりにも掛け離れた絶世の美少女だなんてものや怒らせるととんでもないことになるだとか私に関する噂なんて良いものが無い。
ただどちらの噂も今のかすがとの会話には結び付かない。だから他にも私の知らない噂があるんだと思う。
知りたいような、知りたくないような・・・。
「どうした?」
「な、なんでもない!」
やっぱり聞くのやめよ。ショック受けるような噂だったら嫌だもん。
「えーと、それよりさ、会いに来てくれたってことは私達、友達?」
かすがとはまだ甲斐に居た頃に出会った。お館様に連れて行ってもらった秘湯のような露天風呂にひょんなことから一緒に入ってちょっとはしゃいだりした。
いつか元の世界に帰る時が来ても、この世界で知り合う人との間に壁を作りたくない。別れることにっても築いたものは大切なものとして心の中に残るから。
悩んだこともあったけど今はそう思うから、かすがとも友達になりたいと思って帰るかすがに友達になりたいからまた会いに来てとお願いした。かすがは気が向いたら来ると言って帰って行った。ツンデレのかすがのことだからまた来てくれるよねと思っていたけれど、それ以降全く音沙汰無かった。
かすがはお館様とも政宗とも敵対している謙信様(様付けしないとかすがが怖い)の忍だから会いに来れないのかな。それとも私とは友達になりたくない? 会いに来てくれないのはそのせいなのかもと思っていたんだけど、かすがは会いに来てくれた。
かすがを見つめる眼に不安と期待が混ざり合う。
「お前は・・美夜は私が他国の、それも忍だろうと気にならないのか?」
「気にならないよ。だってかすがと友達になりたいって思っただけで別に忍の友達が欲しいわけじゃないもん」
「っ・・」
当たり前のことを言っただけなのに、なぜかかすがは眼を見開いてふんっとまた横を向いた。今度もやっぱり頬が赤い。
「お前がそんなだから私達は困るんだ!」
「なんで困るの? それに私達って?」
「お前は知らないのか?」
「何を?」
「知らないならいい。気にするな。あえて教えていないのかもしれないことを部外者の私が言うわけにはいかないからな」
「ん?」
かすがは何を言ってるんだろ。職業が忍の知り合いなんてかすがと佐助しか居ないし、二人のうち友達になりたいって思って伝えたのはかすがだけなのに。
佐助は虐めと笑顔の脅しがあるから友達はちょっとヤなんだよね。たまぁに頼りになるちょっと仲の良い近所のお兄さん、みたいな感じで十分。
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