この蒼い空の下で 弐

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「最悪・・・」


ひたすら大きな漬物石を抱えさせられる夢を見て寝起きが悪かったところに昨夜のことを思い出しちゃったからもう気分は下降しかしない。

酔ってたからって自分から政宗に抱き着いてしかも擦り寄っちゃうなんて! 絶対に政宗にからかわれるじゃん! それにあんな甘え方しちゃった後にどんな顔して会えば良いのよ!

柱に頭でもぶつけて昨夜の記憶を無くしたいくらいに政宗に会うのが恥ずかしい。考えただけで顔が熱くなる。


「あっ、そうだ! 幸村誘ってお団子食べに行こう!」


幸村なら絶対に私をからかわないもん。それに私が酔っちゃった時には幸村はもう潰れてたはずだから見てないかもだし。佐助は・・・来ないように幸村から言ってもらおう。

よし。そうと決まれば善は急げだ! 政宗に会わないうちに幸村を見つけて誘わなきゃ。

と思って障子を開けたら目の前に政宗が居た。政宗だ、と思った時には自分でも驚くほどの素早さで開けたばかりの障子を勢いよく閉めてしまっていた。開けなきゃ逃げることも出来ないのに障子越しに届くオーラが怖くてますます開けられなくなる。


「Hey 美夜」

「はイッ」


怖くて声が裏返ってしまった。しっかりと障子を抑えてる手が震えてる。


「俺の顔を見るなり閉めるたぁどういうつもりだ、あ゙?」

「い、いや、あの・・」


どうしようどうしようと忙しなく視線を動かすけど、出入り口たる障子は私自身が塞いでしまったし部屋の中に居るのは私だけ。助けてくれる人も助けになりそうな物も何も無い。

ごくりと唾を飲み込む。な、何事も無かったようにおはよーって言いながら開ける? にこにこ笑ってれば政宗の気分も変わるかもしれないし。

可能性は限りなく零に近いことなんて分かっていたけど障子越しの無言の圧力に耐えられなかった。手が震えていたせいでガタガタとつっかえながら障子を開けてにっこり笑う。実際には引き攣ってたけど。


「お、おはよ。い、いイ天気だね」


途中声がひっくり返ってしまった。引き攣ってはいたけどにこにこと笑いながらさりげなく少しづつ体をずらし障子に背中を貼り付けるように移動しながらその場からの逃走を試みる。

ふっと政宗が笑んだ。邪気の無い笑みに不覚にも心臓が跳ねて急速に頬が熱を帯び始める。どぎまぎする私の頬が政宗の大きな手に包まれた。かと思えば腰にも腕が回されていて密着していた。い、いつの間に!


「good morning. 美夜」


ニヤリ、と。さっき優しい笑みを浮かべたのと同じ人物かと疑いたくなるほど今度の笑みはSっ気たっぷりだった。

散々イジメられてきた体が反射的に逃げようと動くけど、腰に回されていた腕に力が篭って逃げられないどころかより密着させられてこんな状況だというのに頬は熱いし心臓が煩いほどに高鳴る。

顎に指を添えられ上向かされた。間近に迫る政宗を認め思わずぎゅっと眼を閉じたら頬に吐息を感じた。

キスされる! 思わず体を強張らせて身構えるけど、いつまで経っても何の感触も訪れない。

そうこうするうちに頬の近くにあった気配が遠ざかった。かと思ったら顎にあった手が離れてピシッと額に衝撃。思わず「痛っ」と言ってしまったけど言うほど痛くはない。


「人の顔見ただけで閉めるな」


それだけ言うと政宗は私の体を離した。


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