この蒼い空の下で

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「大事なもんなのか?」

「うん。って言っても何となくそう思うだけなんだけど」


撫でたり着物の端で擦ったりしてみても、ヒビは汚れじゃないから消えてはくれない。


「見た感じ普通の石にしか見えないけどなぁ。触ってみてもいい?」

「んー……触るだけだよ?」


成実さんの手の平に石を置いた瞬間、成実さんはうわっ! と声を上げて手を払った。撥ね除けられた石がカツンと音を立てて床に落ち、そのままコロコロ転がっていく。


「ちょっと! 大切なものなんだから大事に扱ってよ!」

「あ、ああ、ごめん」


拾って石を見てみたけど新たにヒビが出来ることもいつの間にか出来てしまってたヒビが広がっていることも無かった。良かった。


「美夜ちゃんはその石触ってもなんとも無いの?」

「無いけど、なんで?」

「さっき石が触れた瞬間にビリッときたんだよ。梵や小十郎の属性攻撃を受けた時に似た感じだったかな」

「気のせいじゃねえのか?」

「かなぁ。一瞬だったしなぁ」

「美夜、貸してみろ」

「大事に扱ってね?」


念を押してから今度は政宗に渡す。と、手の平に置いた途端に政宗は顔をしかめた。手にも不自然な力が入っているのが分かる。


「政宗?」

「美夜、お前本当に何も感じねえのか?」

「感じないよ。政宗は感じるの?」

「ああ。……チッ、返す」

「? うん」


しかめっ面をしてる政宗から石を返される。石から手を離すと政宗は息を吐いて、手の平を閉じたり開いたりを繰り返した。だけどまるで麻痺しているかのようにその動きはぎこちない。


「梵?」

「痺れてやがる」

「やっぱ属性攻撃みたいなもん?」

「いや、似てるが違うな。……抜けたか」


ようやく痺れが取れたらしく、政宗の手の動きがスムーズになった。でも属性攻撃って、なに? それに石に触ったら痺れるって、私そんなこと一度も無いんだけど。

指先で摘んでまじまじと石を見てみたり手の平に転がしたりしてみても痺れたりなんかしない。静電気のようなことも起きたりしない。だけど政宗のあの手の動きは演技なんかには見えなかったし演技をする理由も浮かばない。


「美夜、元の世界に居た時にその石を触った奴はいるか」

「えぇっと……」


じいちゃんとばあちゃんには見せたことはあっても触ってはいなかった気がする。友達は……そもそも見せたことがなかったと思う。


「多分、居ない」

「石はどこで手に入れた?」

「えっと……どこ、だっけ。覚えてない……というか、いつから持ってたっけ」

「分からねえのか?」

「うん。気付いたら持ってた、気がする。多分覚えてないくらい小さい頃に貰ったか買ってもらったんだと思う」

「Hnm……。ひびがいつ頃出来たのかは分かるか」

「分かんない。でも最後に見たのは確かこっちの世界に来る二、三日前だったと思うから、それ以降だと思う」

「そうか」


聞きたいことは聞き終えたのか、政宗は考え込むように視線を下げた。もういいかなと石を仕舞おうとしたら手首を掴まれ止められる。止めたのは政宗だ。


「美夜、その石を借りることは出来るか?」

「え……」

「無理か?」

「んー……無理っていうか、人に預けたことが無いから心細いような不安なような……」


どうしてたかが石一つを貸すだけでそう思うんだろう。お守りだから? そういえばどうしてお守りだなんて思ってるんだろ。誰かにそう言われたのかな?


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