この蒼い空の下で
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部屋に戻ってゴロゴロしているうちにあっという間に陽が暮れた。そろそろ夕飯の時間。朝は一人だけど(みんな早起きなんだよね。私も頑張って早く起きてはいるんだけどまだ遅いみたい)昼と夜は基本的に政宗と食べる。場所は政宗の部屋が多くて、今夜も政宗の部屋だと侍女さんが呼びに来てくれたから向かったけれど政宗は居なかった。まだ何か作ってるんだろうと思って先に座って待っていたら少ししてから政宗も来た。だけど普段と違う姿に思わず首を傾げる。
「待たせたな」
「どうしたの?」
「何がだ」
「あんたがお膳を運んでくるなんて今まで無かったじゃん」
政宗は手に二人分のお膳を持ってた。しかも何故か袖が邪魔にならないように紐を襷掛けにしてる。
「今夜のDinnerは特別なんだよ」
「特別?」
私の前に置かれたお膳の上の品はいつものと比べても特に変わりはない。和え物煮物汁物エトセトラ。おかずが二つ三つ多いけど、それが特別?
「何が特別なの?」
「食えば分かる。お前の舌が馬鹿じゃなければだがな」
「私は味音痴じゃないわよ」
なんだか政宗楽しそう。それに意地悪な感じが全然しない笑みだし。とりあえず手を合わせていただきますと言って箸を持って最初に眼に映った和え物を口に運ぶ。
「あれ? 味が、違う?」
「口に合わねえか?」
「ううん、そんなことない。すっごく美味しい。でもいつものご飯と味付けがちょっと違う気がしたの。作る人替わった?」
ヒュゥ、と政宗が口笛を吹いた。
「俺が作ったんだよ」
「……はい?」
「今夜の俺とお前のDinnerは俺が作ったんだよ」
政宗が、作った? これを? このすっごく美味しいご飯を? ……あ、このお野菜小十郎さんの畑にあった。これも。てかほとんどそうじゃん。
「……小十郎さんの作ったお野菜美味しいね」
「俺が作ったのがそんなに信じられねえのかよ!」
「だって美味しいんだもん!」
「Ha! 要するに自分が料理が出来ねえもんだから悔しいわけか」
「作れるわよ! 小さい頃から手伝ってたんだから!」
「だったら明日のDinnerはお前が作ってみろ」
「良いわよ。そのかわり美味しかったら謝ってもらうからね!」
「OK、いくらでも頭下げてやるよ。その代わり不味かった場合はどうする」
「あんたの言うこと何でも聞いてあげる」
「良いのか? そんなこと言っちまって」
「良いわよ、別に。絶対に不味くないもん」
「OK、なら不味かった場合は……そうだな、俺の命令に一つ従え」
「一つと言わず何個だって従ってあげるわよ」
「その言葉、忘れるなよ?」
不敵に笑う政宗に私も同じ笑みを返す。料理は得意なんだよね。身内だけじゃなくて友達からも美味しいとしか言われたことないんだから。
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