この蒼い空の下で

□06
2ページ/4ページ


暴れても無駄でそのまま鍛練場の外へと連れ出された。でもちょっと歩いただけですんなり降ろしてくれた。何か企んでるのかも。今のうちに逃げなきゃ。


「美夜様、こちらを」

「え?」


逃げるために縁に上がろうとしたら侍女さんが来て手ぬぐいを渡された。何に使うの? 首を傾げてたらバシャッと派手に水をぶちまける音。何だろうと何気なく振り向いたら井戸から汲み上げた水を、上着を腰に垂らし上半身だけ裸になった政宗が頭から被ってた。

あ、だからさっさと降ろしてくれたわけか。でも汗を流すためとはいえ豪快だなー。全身ずぶ濡れじゃん。って手ぬぐいはそのためか! それってなんか部活の休憩時とかに女の子が好きな男子に「これで汗拭いてください!」とか言ってタオル渡すシチュエーションに似てるんだけど!

なんで私がそれを政宗とやらなくちゃならないわけ!? ふりとはいえ許婚だから!? あ、成実さんも水被った。よーし、政宗じゃなくて成実さんに渡、あああ侍女さーん! 成実さんに渡すの早過ぎー! 政宗もニヤニヤした顔を向けるな!! 誰が渡すか! 意地でも渡すか!


「な、何よ」


何かを考えるように視線を僅かな間横にやった政宗がこっちを見て笑った。にっこりじゃなくてニヤリって。うーわー、嫌な予感がするよ。ていうかこの場合予感じゃなくて確実にセクハラされるよね!?


「わっ」


ビビらせるためかゆっくり近寄ってくる政宗から逃げるように後退ってたら足が縁に当たってバランスが崩れた。尻餅を突くように縁に座ることになった私の上に影が出来る。ヤバい。こーゆー展開知ってるぞ。

顔上げたら絶対に政宗が居るんだよ。だって私の前に政宗が履いてたのと同じ色の袴を履いた人の足が見えるんだもん! んでこの後両側に手を突かれたりして逃げ場を封じられてなんかされるんだよ! 定番の展開だよ! ほら手がきたー!!


「てぇい!」

「ぐっ!」


そんな展開誰も望んでない! ていうか私が望んでない! 望まない! だから勢いよく頭を上げたらガツンと衝撃。狙い通り政宗の顎にクリーンヒット。イェーイ! ちょっと頭痛いけど私の勝ちー!

となるわけもなく。いや、顎には当てましたよ? でもね、至近距離に居る私を政宗が逃がすわけなかったんです。しかも顎に頭突きした私を。


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ