この蒼い空の下で

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「ん?」


たくさんの男の騒ぎ声が聞こえてきた。これはもしや喧嘩? でもここお城だよね? ま、まさか城内での刃傷沙汰!? わっ! どうしよう! 見に行かなきゃ!

野次馬根性丸出しと言いたいなら言えばいい。騒ぎがあれば見に行くのは仕方がない。だって好奇心が疼くんだもん。でも見るのは巻き込まれないよう離れた位置から、だけど。


「えーと、こっち、かな」


声のする方へと歩いて行ったら一つの大きな建物とこれまた広い広場がある場所に出た。建物の入口にはたくさんのヤンキー(にしか見えない見た目の多分兵士)の人達がたむろっていた。騒ぎの中心は建物の中っぽいけどヤンキー兵士(仮)達のせいで屋根しか見えない。


「筆頭最高っすー!!」

「成実様もふぁいとっすー!!」

「筆頭? 成実様?」


ってことは喧嘩してるのは政宗と成実さん? 上司と部下の喧嘩? はっ! まさか下剋上!? ちょっ、私も見たい! すいません、誰のか知りませんが草履借ります。

側の敷石にあった草履を勝手に借りて建物の方へ。でもヤンキー兵士(仮)達の壁が厚くて隙間を縫って中に入ることも出来ない。場はますます盛り上がってきて余計に気になってくる。


「中が見たいのか?」

「え? あ、小十郎さん」


人垣の後ろでうろうろしていたら声を掛けられた。振り向いたら小十郎さんが居て、いつものようにどこかに出掛けて帰って来たところらしく馬を引いていた。


「なんか政宗と成実さんが喧嘩してるっぽいんです」

「喧嘩ではなく仕合だろう。ここは鍛練場だからな」

「あ、そなんだ」


なぁんだ。ちょっとガッカリ。でもどっちにしろ見てみたいかも。どっかに隙間とかないかな。またうろうろしてたら小十郎さんが近くにいたヤンキー兵士(仮)の一人に馬を預け、人垣に向かって道を開けろと言った。


「うわ、すごっ」


大してデカイ声だったわけじゃないのにヤンキー兵士(仮)達が綺麗に左右に退いたから道が出来た。なんかの一場面みたい。すっごいなぁ。

ヤンキー兵士(仮)達が割れて出来た道を小十郎さんの後ろに着いて歩く。なんか注目されてる気がするけど鍛練場に女が珍しいからかな?

建物の中に入ると中では木刀を持った政宗と成実さんが仕合をしてた。カンカンと木刀同士がぶつかる音が絶え間無く響く。


「Ha! その程度かよ!」

「まだまだこれからだっての!」


なんか、楽しそう。お互い汗だくになって打ち合いながらも二人は笑ってる。子供同士のちゃんばらごっことは違う感じがするのに、なんで楽しそうなんだろう。

木刀を振り下ろし、受け止め、弾き、振る。息をも尽かせぬ攻防を繰り返しながら、それでも成実さんが押されているのが素人の私でも分かった。汗の量も息の荒さも成実さんの方が酷い。

政宗が下から斜めに振り上げた木刀が、受け止めようとした成実さんの木刀を弾き飛ばした。政宗が木刀の先を成実さんの首に突き付けるのと私の体が誰かに抱き寄せられたのはほぼ同時。

パシッという音が頭上でして、見上げれば弾き飛ばされた成実さんの木刀を小十郎さんが掴んでいた。


「怪我はないか?」

「だ、大丈夫です」


小十郎さんは私の体を離すとこっちへ来ていた成実さんに返した。


「気をつけろ」

「分かってる。美夜ちゃんごめんね」

「気にしないでください。私が勝手に見に来ただけですから」

「見に来るのは構わねえが気をつけろよ」

「うん」


ぽんと頭に手を置いてきた政宗に素直に頷く。セクハラとかイジメさえしてこなけりゃ私だって政宗につっかかったりしない。


「ねえ。仕合って楽しいの?」

「An?」

「二人とも笑ってたでしょ? だから楽しいのかなって」

「そりゃ、楽しいからな」

「女の子には理解し難いかもね」


確かにわかんない。剣道とかやったことあったら分かったのかな?


「さってと、汗でも流してくるかな。梵も行く?」

「ああ」

「わっ! ちょっ! 何すんのよ!」


見送ろうとしたらなぜか政宗に担ぎ上げられた。小十郎さんに助けてもらおうとしたら兵士さんたちに鍛練の指示を出しててもうこっちに意識は向いてなかった。自分でどうにかしろってことですか!?


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