この蒼い空の下で

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あ〜あ、政宗のせいでとんでもない目にあっちゃったよ。

お昼ご飯の時に政宗と喧嘩しちゃったせいで聞く羽目になった小十郎さんの長い長ーい説教からやっと解放された。

その間足を崩すことが出来なくて(しようとすると姿勢を崩すなと怒られる)、パンパンに腫れてると錯覚しそうなくらい足が痺れた。

でも説教中は小十郎さんの顔がすっごく怖くて痺れを意識したのは説教から解放された後。

政宗と小十郎さんが出て行った後の政宗の部屋で、足を投げ出して痺れが取れるのを待つ。

それにしても、小十郎さんの説教すら終わらせるほどの用って何なんだろ。政宗が小十郎さんにそろそろと伝えた途端に小十郎さんはため息を吐いて説教を終わりにしたんだよね。だからよっぽど重要な用なんだと思う。

気になるんだけど足が痺れ過ぎてて動けない。ちょっと身動きするだけで足全体がビリビリするんだもん。でもまあ政宗に遊ばれなかっただけマシか。何の用か知らないけど用事に感謝だよ。

少しすると、侍女さんが私を呼びに来た。その頃にはもうほとんど痺れは取れていたから侍女さんに促されるまま着いて行った。

辿り着いたのはなぜかお風呂場。しかもいつも一人にしてくれるのに今日は二人の侍女さんが着いてきた。

でも理由を聞く暇は全然無かった。脱衣所の扉が閉まると、待ってましたとばかりに侍女さん達はテキパキと私の着ている物を脱がせ浴室に連れていき、椅子に座るよう促されて座ると今度は髪と体を洗われた。

湯舟に浸かって一息つけたのもつかの間、時間が迫っているとかで出るよう促され体を拭かれ小袖を着せられた。

いくら同性でも人に洗われるのなんて恥ずかしいと感じる暇さえなかった。

部屋に戻ると、入る前に眼を閉じるよう言われた。何に対してなのか分からないけれどやる気を漲らせている侍女さん達の迫力には勝てなくて、言われるままに眼を閉じた。

中に入ると座らされ、二人がかりで髪を梳かれた。白粉は紅はと交わされる侍女さん達と会話から、どうやらこれから私は化粧をしてもらえるみたい。

部屋の端では帯の色は、とか言っているのが聞こえるから着飾らされるのかも。

今夜何かあるとか聞いてないんだけどなぁ。でも化粧までしてこんなに本格的に着飾ることは初めてだからドキドキワクワクしてくる。私だって女だもん。

化粧が終わると立たされ、着物を着付けられた。侍女さん達が私から離れる気配がして、満足げな声が交わされた後にようやく眼を開けても良いと言われた。

そぉっと眼を開く。侍女さんが私の顔の高さに鏡を掲げていてくれて、真っ先に自分の顔が眼に映った。

白粉を叩かれ雪みたいに白くなった頬。黛で形良く描かれた眉。桃色の口紅を塗られた唇。

これが自分かと疑ってしまったほど大人っぽい。これなら年相応に見てもらえるかも。それに、自分で言うのもなんだけど・・。


「so Cute・・」


思わず零れ出た、といった感じの、吐息に乗せた呟き声が聞こえた。

何気なく振り向いたら政宗が居た。政宗と入れ代わるように侍女さん達が音も無く退出していってしまい、二人きりにされてしまう。

着飾った姿なんて自分で見るのすら初めてでなんだか照れくさいのに、ましてや政宗に見られるなんて。どんな顔をしてたら良いのか分からない。

落ち着かなくていたたまれなくて、俯いて無意味に袖を弄る。着せられていたのは白地に裾にいくにつれたくさんの花が染め抜かれた着物だった。まるで雪の中に花が咲いているかのように見える。

そんなことは温室でもないと無理なのに、それをあえて刺繍で表現することで、白一色に染められる物悲しい冬に明るさを持たせようとしているみたい。見ているだけでこっちの気分もほんわり暖かく明るくなる。

それにとっても綺麗。私には勿体ないくらい。

もしかして、政宗が喋らないのは似合っていないから?


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