この蒼い空の下で

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陽が暮れ始めた頃、今日宿泊予定の町に着いた。先に行っていた佐助が探してきた宿に入る。案内された部屋は広く、襖を閉めれば二部屋に出来るらしい。

まだ一日目だし乗ってるだけだったけど、慣れない馬旅でヘトヘト(政宗がセクハラしてきたのも原因だけど!)だった私は早めの夕飯を済ませると一足先にお風呂に向かった。


「はふぅ〜」


着物を脱いで先に体を洗ってから顎下まで浸かった。温泉じゃなくて普通のお湯だけど、疲れた体には十分気持ち良い。寝ちゃわないように気をつけなきゃね。また湯あたりなんかして政宗に裸見られる羽目になったら嫌だもん。あんな恥ずかしい思いは一度で十分だよ。

でも、かすがほどじゃなくてももうちょっと胸が大きくて足もすらっと長くて腰もキュッと良い具合に括れててお尻もキュッと上がってたら、って全身じゃん! ま、まあとにかくそういう体だったら見られても想像よりは恥ずかしくないような気がする。

政宗はしょっちゅう私は腰が細過ぎるだとか胸が小さいだとか言ってくるし、前に湯あたりで倒れた時なんか裸見ても何にも感じなかったって言ってた。あれはかなりショックだった。

だから今の私の体型は政宗には不満しか無いと思うんだよね。セクハラしてくるのも私の体が魅力的なんじゃなくて私の反応が楽しいだけなんだと思う。そんな体を見られるなんていろんな意味で恥ずかしい。

人を羨んでも仕方ないって分かってるけど、かすがみたいなプロポーションになりたい。そしたらきっと政宗だって・・・。


「って、だってって何よ。別に政宗のために綺麗になりたいわけじゃないし!」


叫んだ後シーン、となった。当たり前だ。今は私以外お風呂に入っていないんだから。なのにいったい誰に対しての釈明だったんだか。


「そろそろ出よ」


熱めのお湯だったからきっと上せかけてたのかも。頭がぼーっとしてたから変なこと考えちゃったのよ。たぶん。

あとでお水でも貰おと思いながら脱衣所から出て、部屋のある二階に行こうとしたら階段を降りてくる小十郎さんと行き会った。


「どこかに出掛けるんですか??」

「ああ、必要な物の買い付けにな。何分急な出立だったからな」


そういえば政宗も予定があるって言ってたっけ。それが何かは結局教えてもらってないけど。


「あ、政宗で思い出した」

「どうした?」

「明日は絶対に小十郎さんの馬に乗せてくださいって頼もうと思ってたんです」

「それほどに政宗様とは嫌か?」

「嫌です。セクハラしてくるし走らせたらものすっごく怖いし」

「急ぐ旅では無いから走らせることは無いぞ? 雨が降り出せば別だがな。それに、まあ政宗様や俺、真田に猿飛も居るからな。滅多なことは起こらねぇだろうが、万が一のことを考えれば政宗様と一緒に居た方が良い。と言っても、気持ちは変わらねぇか?」

「なんで政宗と一緒の方が良いんですか?」

「政宗様の馬術は伊達軍一だからだ」

「えぇっ!? あんなに怖くて荒いのに!?」


びっくりし過ぎて大声になっちゃったから慌てて口を塞いだ。政宗に聞こえてないと良いけど。


「本当のことだ。政宗様は足だけで巧みに操られる」

「足だけ? でも今日だってそうだし、今まで何度か一緒に乗った時も政宗は手綱を握ってましたよ?」

「お前は確か馬に乗るのはこっちへ来てからが初めてだったな?」

「はい」

「では、そんなお前が同乗しているのに手綱を握らずにいたら、どう思う?」

「そんなの怖いに決まってます! ハンドル握らずに運転してるみたいな、もの・・・」


小十郎さんが何を言いたかったのかが分かって、悔しくなって頬を膨らませた。小十郎さんはそんな私を見て苦笑しながらぽんと頭に手を置いてきた。


「ついでだからこれも伝えておく。難しいだろうが政宗様に抱き寄せられた時は凭れていろ。その方がお前に掛かる負担も少ない」


また悔しいって思った。ドキドキして顔を赤くする私を見て楽しみたいから抱き寄せたりしてくるんだと思ってたのに。何とかして少しでも離れようとしてた私が馬鹿みたい。


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