この蒼い空の下で

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「・・・・・・・・・」


えーっと、自力で起きたんだけど、佐助は?

顔に濡れ手ぬぐい置かれたり鼻を摘まれたりして起こされたいわけじゃないけど、てかされたくないけど! 最近ずっと佐助にそんな起こされ方されてたからそれが無いとなんか気になって落ち着かない。


「お、起きていいんだよね?」


誰に確認してるんだと心の中でセルフツッコミしつつそろそろと起き上がる。少しすると侍女さんが来て、持ってきてくれた水で顔を洗って着替えをした。運ばれてきた朝食を食べ終わる頃になっても佐助は一度も現れなかった。

気になってもやもやしたまま食事をしてご馳走様でしたと手を合わせ、お膳を下げに来た侍女さんに政宗の居る場所を聞いたらなんとびっくり。政宗は私の隣の部屋を宛てがわれていた。

それを聞いて佐助が現れなかった原因はこれかもって思った。昨日政宗に気付かれずに覗きとか無理って言ってたし。

気配で分かるんだろうけど、そんなものどうやったら分かるんだろ。知りたいなぁ。そしたら佐助に驚かされることも無くなるし。佐助の現れ方ってほんっと心臓に悪いのよね。

なんてことを考えながら隣の部屋の前に立つ。それだけでなぜかドキドキしてきた。


「ま、政宗。起きてる? 入っていい?」

「ああ」


短い返事にまでドキドキして、深呼吸をして落ち着かせてから障子を開けた。中には小十郎さんも居た。二人におはよと挨拶してからどこに座ろうかなと思っていたら小十郎さんが立ち上がった。


「では馬の様子を見てきます」


そう言うと小十郎さんは部屋を出て行った。それを見送ってから政宗の前に座った。


「馬がどうかしたの?」

「城を出てからずっと走り通しだったからな。調子が整ってねぇようなら出発を遅らせる必要があるんだよ」

「随分急いで来たんだね」

「早くお前の姿が見たかったらな」


そう言ってドキリとするほど優しい笑みを浮かべた政宗がそっと頬に触れてきた。せっかく落ち着かせたのにさっき以上にドキドキしてきて、頬だけじゃなくて顔中が熱い。

政宗の顔を見ていることも出来なくなって俯く。昨日といい今日といい政宗が変だ。なんていうか、甘い。


「馬に問題が無けりゃすぐ出発するからお前も準備しとけよ」

「う、うん。って、え? 準備?」


何のことか分からなくて政宗を見たら「あー・・」って顔をしてた。


「伝えるのを忘れてたな」

「忘れないでよ! で? 準備って何の?」

「奥州に帰る準備だ」

「えっ!? 今日!? 政宗達昨日着いたばかりなのに?」

「こっちにも予定があるんだよ」

「予定って?」

「知りたいか?」


ふ、と笑った政宗が身を乗り出して顔を近付けてきた。心臓がまた暴れ出して顔中が熱くなる。手を突いて体を後ろに引けば離れた分以上に政宗が近付いてくる。


「美夜」

「っ」


こめかみの辺りで囁かれた。耳元で囁かれた時になる鳥肌が立つのとは違うゾワゾワとした感覚が襲ってきて、思わずぎゅっと眼を閉じる。

腰を抱き寄せられ、畳から離れた手が大きな手に包まれた。心臓が壊れそうなほどに鼓動が早い。

これってセクハラ? イジメ? それとも別の何か?


「政宗様」


判断がつかなくて動けずにいたら、部屋の外から小十郎さんが政宗を呼んだ。政宗がそれに答えて会話が交わされていくけど、抱き寄せられたままのせいか鼓動が早くて会話の中身は頭に入って来ない。

ようやく解放された時には全力疾走した後みたいに疲れてて、酸欠なのか少し頭がぼぉっとする。


「美夜、さっき言った通り準備しておけよ」


ぽんと軽く私の頭を叩くと政宗は小十郎さんを連れてどこかに行った。それを見送りながら無意識に首筋に触れて、ハッとなって急いで自分の部屋に戻って鏡を取り出した。

解放される前に二回ほど微かな痛みを感じたのは気のせいなんかじゃなかった。ってことはあれはセクハラだったんだ! もー! 私のドキドキを返せ!


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